教育学部の理念

島根大学教育学部は,平成16年度に全国で初めての「教員養成に特化した専門学部」として新たなスタートを切り,独自の教師教育プログラムを構築してきました。そして平成29年度には,現代的教育課題や地域の教育課題に対応する機能を強化するためのリニューアルを果たしました。

島根大学教育学部では,新しい教育課程の理念として次の3つを掲げています。

• 学び続ける教師
• 教育実践を省察する教師
• 社会における未来を創造する教師

また,私たちはこのような教師となるためには次の力が必要だと考えており,その総体を「教師力」と呼んでいます。

• 学習者を理解し,身につけた知識や技能で教育を実践する力
• 相手や目的に応じて適切なコミュニケーションを行う力
• 必要な情報をさまざまな方法で探したり発信したりして,自己の知識や能力を深める力

 

 

教育学部の教育目標と3つのポリシー

教育学部の3つのポリシー

(1) 卒業認定・学位授与の方針 DP(ディプロマポリシー)new

人材育成の目標

教育学部では,学士課程において以下に掲げる資質・能力を身につけた者に学士(教育学)を授与します。

1. 学び続ける教師:学習環境の変化や学習者の多様性に柔軟に適応するため,教育に関する理論や法律・制度を理解するとともに,教育や専門領域における課題について継続的・発展的に学び続けることができる。
2. 教育実践を省察する教師:学習者の学習成果と課題を的確に把握し,教育実践を省察する力量を獲得することで,教育実践の継続的な改善に取り組むことができる。
3. 社会における未来を創造する教師:さまざまな場面でリーダーシップや協働の経験を積むことで,学校を越えて地域や社会に肯定的な影響を与え,変化する社会の中で未来において学習者が必要とする能力を育むことができる。

 

目標としての学修成果

分野 到達目標
① 学校理解 学校での教育実践を広く歴史や法律・制度から捉えたうえで,より望ましい学校のあり方を追究することができる。
② 探究力 教育や専門領域における課題を見出して,自ら進んで情報を収集したり知識や技能を深めたりすることができる。
③ 教師像・倫理 教育を通じて公正な社会を実現できる教師を目指して,教師として求められる倫理観や教育実践の基盤となる法令等を照らした行動・実践に取り組み,理想とする教師像を確立することができる。
④ 社会参画 地域や社会の課題解決を目指した活動に継続的に参加し,よりよい社会の実現に向けて能動的に行動することができる。
⑤ リーダーシップ・協働性 大学における学修・研究や体験学修・社会参加といったさまざまな場面において,率先垂範の行動をとったり,他者と協働したりすることができる。
⑥ 教科知識・技能 教科内容や学問領域に関する知識とそれらをふまえた指導方法に関する知識を身につけ,授業等で実践できる。
⑦ 授業実践 的確な教材分析をふまえて授業を設計・実践・評価したり,授業の成果と課題について省察・改善したりすることができる。
⑧ 学習者理解・支援 多様な学習者の学習機会を保障するために,発達段階や多様性をふまえた支援を行い,学習環境を工夫できる。
⑨ ICT・データ利活用 学習・授業改善のための教育データの利活用の知識を有し,学習者の情報活用能力を育成したりICTの効果的な活用方法や活用場面を構想・実践したりすることができる。

 

(2) 教育課程編成・実施の方針 CP(カリキュラムポリシー)new

  1年次 2年次 3年次 4年次
前期 後期   前期 後期  
全学共通教育 <島大STEAM科目群>
「数理・データサイエンスへの誘い(必修)」,「情報科学(必修)」など
     
<ユニバーサル科目群>
「英語(必修)」,「初修外国語(必修)」,「SDGs入門(必修)」など
     
<地域創生科目群>      
<教養育成科目群>      
専門教育科目 <専門共通科目>
・教職論
・教育学部で学ぶこと
     
  <主専攻専門科目> ・卒業研究
・教職実践演習
  <副専攻専門科目>  
教育体験活動 <基礎体験領域>
・入門期セミナー
     
<学校教育体験領域>
・学校教育実習I
    実習セメスター
・学校教育実習IV
・学校教育実習V
・学校教育実践研究(一部)
 
教育課程の編成の方針 ① 1年次~2年次では,主として全学基礎教育を履修します。全学基礎教育は,現代社会が求める基礎的な資質・能力の成長を促すために,すべての学士課程に所属する学生が共通して学修する教育課程であり,「島大STEAM科目群」「ユニバーサル科目群」「地域創生科目群」「教養育成科目群」の4つの科目群に分かれます。このうち「島大STEAM科目群」「ユニバーサル科目群」には必修科目が設定されています。「島大STEAM科目群」では「数理・データサイエンスへの誘い(2単位)」と「情報科学(2単位)」,「ユニバーサル科目群」では「英語(6単位)」と「初修外国語(4単位)」,「SDGs入門(2単位)」が必修科目です。このほかに,選択科目として4つの科目群から幅広い分野の授業科目を選択履修し,全学CPが定める各科目群の目標への到達を促します。
② 全学基礎教育以外のカリキュラムは「専門教育科目」と「教育体験活動」から構成されます。「専門共通科目」「主専攻専門科目」「副専攻専門科目」からなる専門教育科目で自らの主専攻・副専攻に応じた専門的知識・技能を身につけるとともに,それらを「基礎体験領域」「学校教育体験領域」からなる教育体験活動で実践します。理論と実践の往還を繰り返すことにより,教員としての高い資質を育成します。
③ 教育学部では,SDGsの目標とその達成への理解を促すため,全学基礎教育の「SDGs入門(2単位)」を必修科目として学修します。また,特に専門教育科目の「学校教育のためのSDGs(2単位)」での学修を通じて,貧困や不平等,気候変動,環境劣化,繁栄,平和と公正など,私たちが直面するグローバルな諸課題の解決を学校教育において実現できる人材を育成します。さらに,全ての授業科目において,SDGsの17の目標との対応関係をシラバスに記載し,学生の関心に沿った授業選択を促します。
教育課程における教育・学習方法に関する方針 ① 1年次の前期には,初年次教育プログラムとして専門共通科目の「教職論」「教育学部で学ぶこと」,基礎体験領域の「入門期セミナー」,学校教育体験領域の「学校教育実習I」が設けられています。これらの授業・活動におけるグループ学習やプレゼンテーションなどの能動的な学修を通して,大学教育の基礎的な技能を身につけるとともに,主専攻・副専攻での学修への見通しを得ます。
② 1年次の後期から主専攻専門科目,副専攻専門科目の履修が始まります(ただし,一部の専攻では1年次前期から履修可能な科目もあります)。これらの科目の履修を通して,市民性の育成や多様性の尊重が求められる学校現場でより専門性を発揮できる教師として必要な資質・能力を身につけます。
③ 教育体験活動は4年間を通して行いますが,特に3年次後期は「実習セメスター」と呼ばれ,教育体験活動を中心に学修して教育実践力を高める学期として位置づけられます。この学期に「学校教育実習IV」「学校教育実習V」「学校教育実践研究(の一部)」を行います。
④ 4年次には「卒業研究」「教職実践演習」が必修として課されます。「卒業研究」は自らの主専攻における学修の総決算であり,論文作成,演奏,作品制作などの形で4年間の学修成果を形にします。「教職実践演習」は教育職員免許状を取得するための最終関門であり,教育学部学生が本学部のディプロマ・ポリシーを満たしているかどうかを確認します。
学習成果の評価の方針 ① 各科目の学修成果は,試験や課題等の成績及び取組状況等を考慮し,成績評価基準に基づいて評価します.成績評価の方法については,授業内容の詳細とあわせてシラバスにおいて科目ごとに明示します。
② 教育学部には4年間にわたる学びの軌跡や成果を記録する「学修ポートフォリオ」と呼ばれる独自の履修カルテがあります。ここには本学部のディプロマ・ポリシーごとのGPAが数値化されて表示されます。教育学部生は学修ポートフォリオを卒業までに複数回作成し,教員からの指導を受けることで自らの適性や課題を主体的に把握する自己教育力を育みます。学修ポートフォリオは「教職実践演習」でも活用されます。

 

(3)入学者受入れの方針 AP(アドミッション・ポリシー)new

求める学生像

島根大学教育学部では,特色ある教育課程のもとで教師になることを希望する,次のような学生を求めます。

  1. 高等学校までの基礎学力を備えており,教師に要求される専門的知識・技能を深く学ぼうとする人。
  2. 豊かな人間性,子どもに対する愛情,教育的情熱を有する人。
  3. 論理的思考のもとで,自ら課題を発見し探究する姿勢を有する人。
  4. 他者との協働や対話を図りながら,社会の発展に貢献しようとする人。

以上の受入方針に基づいて一般選抜・総合型選抜を行い,教師をめざす多様な資質・能力を有する学生を受け入れます。

 

入学者選抜の基本方針

※注1:Ⅰ類,Ⅱ類とも,免許プログラムを選択することで,技術科(中学校),工業(高等学校),幼稚園,特別支援学校の免許を取得することが可能です。
※注2:Ⅰ類では,副専攻で家庭科(中学校,高等学校)の免許を取得することが可能です。
注1,注2の詳細は教育職員免許状の取得と学びのしくみをご覧ください。

〇一般選抜(前期日程)

学校教育課程I類
小学校教育専攻
特別支援教育専攻
国語科教育専攻
英語科教育専攻
社会科教育専攻
数学科教育専攻
理科教育専攻
【基礎的知識と思考力を重視】
大学入学共通テストでは,各教科の基礎的な知識を幅広く習得しているかを評価します。
 「小論文」では,提示された課題に対する理解と文章表現を通して,教職への興味・関心,論理的思考力,表現力について評価します。
学校教育課程II類
保健体育科教育専攻 【基礎的知識と実技能力を重視】
 大学入学共通テストでは,各教科の基礎的な知識を幅広く習得しているかを評価します。
 「実技」では,入学後専攻での学習に必要な実技について,技術や能力などを評価します。選択種目試験では基礎的技能を試験し,また特技種目試験では基礎技能と応用技能を試験し,その種目に関する能力や適性を総合的に評価します。
音楽科教育専攻 【基礎的知識と実技能力を重視】
大学入学共通テストでは,各教科の基礎的な知識を幅広く習得しているかを評価します。
 「実技」では,入学後専攻での学習に必要な実技について,技術や能力などを評価します。全員対象試験では基礎的音楽能力を,特技試験では音楽表現のための技術的到達度と表現能力を試験します。
美術科教育専攻 【基礎的知識と実技能力を重視】
大学入学共通テストでは,各教科の基礎的な知識を幅広く習得しているかを評価します。
 「実技」では,入学後専攻での学習に必要な実技について,造形に関する基本的な表現能力を試験し,技術や能力などを評価します。

 

〇一般選抜(後期日程)(学校教育課程I類のみで実施)

学校教育課程I類
小学校教育専攻
特別支援教育専攻
国語科教育専攻
英語科教育専攻
社会科教育専攻
数学科教育専攻
理科教育専攻
【基礎的知識と教職への意欲・適性を重視】
大学入学共通テストでは,各教科の基礎的な知識を幅広く習得しているかを評価します。
 「ペーパーインタビュー」では,志望理由や自分自身の経験。興味の記述を通して,教職への意欲や適性と,表現力を評価します。

 

〇総合型選抜I「へるん一般型」,「へるん特定型 地域志向入試(地域教員育成型)」(学校教育課程I類のみで実施)

 

学校教育課程I類
小学校教育専攻
特別支援教育専攻
国語科教育専攻
英語科教育専攻
社会科教育専攻
数学科教育専攻
理科教育専攻
へるん一般型 【読解力・思考力・表現力,主体的な学びの経験と教職への意欲を重視】
「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」,「読解・表現力試験」,「志望理由書」を用いた「面接」により,知的好奇心・探究心を重視し,学力の3要素を総合的に評価するとともに,教職への意欲や適性について評価します。
へるん特定型 地域志向入試(地域教員育成型) 【読解力・思考力・表現力,主体的な学びの経験と教職への意欲を重視】
「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」,「読解・表現力試験」,「志望理由書」を用いた「面接」により,知的好奇心・探究心を重視し,学力の3要素を総合的に評価するとともに,教職への意欲や適性について評価します。また,「教職への学びレポート」では,将来の教職につながる学びの経験や構想について評価します。

 

〇総合型選抜I「へるん特定型(芸術・スポーツ・技能入試)」(学校教育課程II類のみで実施)

当該専門分野を学ぼうとする強い興味・関心,そのために必要な基礎的能力・経験等を有する学生を求めます。

学校教育課程II類
保健体育科教育専攻 【読解力・思考力・表現力,保健体育の専門性に関する主体的な学びの経験と教職への意欲を重視】
「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」,「読解・表現力試験」,「志望理由書」を用いた「面接」により,知的好奇心・探究心を重視し,学力の3要素を総合的に評価します。また,保健体育に関する興味関心,学習意欲などを中心に,教職への意欲や適性などについて評価します。さらに,「実技」では,保健体育における実技の学習に必要な基礎的運動能力について試験を行い,「スポーツ活動調書」の記載内容を点数化します。
音楽科教育専攻 【読解力・思考力・表現力,音楽の専門性に関する主体的な学びの経験と教職への意欲を重視】
「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」,「読解・表現力試験」,「志望理由書」を用いた「面接」により,知的好奇心・探究心を重視し,学力の3要素を総合的に評価します。また,志望する音楽分野に関する興味・関心・学習意欲などを総合的に評価します。さらに,「実技」では,専門的な実技力,教職に欠かせないピアノの基礎的な演奏能力を評価します。
美術科教育専攻 【読解力・思考力・表現力,美術の専門性に関する主体的な学びの経験と教職への意欲を重視】
「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」,「読解・表現力試験」,「志望理由書」を用いた「面接」により,知的好奇心・探究心を重視し,学力の3要素を総合的に評価します。また,美術に関する興味・関心,基礎的内容の理解等を中心に,教職への意欲や適性について評価します。さらに,「実技」では,水彩画の制作をとおして,描写力,構成力,色彩感覚等を試験し,「美術活動調書」の内容と総合して評価します。

 

 

各選抜方法における求める力(評価する力)

区分 選抜方法 知識技能 読解力・思考力・表現力 協調・協働性 知的好奇心・探究心 実技能力 教職への意欲・適性 地域への志向
一般選抜 前期日程 大学入学共通テスト          
小論文          
実技            
後期日程 大学入学共通テスト          
ペーパーインタビュー          
総合型選抜I へるん一般型 「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」        
読解・表現力試験          
志望理由書を用いた「面接」      
へるん特定型
地域志向入試
(地域教員育成型)
「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」        
地域を志向した「教職への学びレポート」        
読解・表現力試験            
志望理由書を用いた「面接」      
へるん特定型(芸術・スポーツ入試) 「調査書」,「活動報告書」及び「クローズアップシート」        
読解・表現力試験            
志望理由書を用いた「面接」      
実技(※)            

(※)保健体育科教育専攻の「スポーツ活動調書」,美術科教育専攻の「美術活動調書」を含みます。