地域の教育組織と学生,大学教員とが協働するロボコンプロジェクト

(2018年度)

プロジェクトの名称 地域の教育組織と学生,大学教員とが協働するロボコンプロジェクト
プロジェクトの概要

本プロジェクトの期間は1年間とし,活動内容を大きく1支援体制確立期,2中学生指導期,3大会運営期に分けて活動した。以下に,各期の活動計画を示す。
1.支援体制確立期
支援体制確立期では,大学教員が,ロボットづくりの基本から指導したり,外部の指導者のもとへ大学生を派遣し指導法の講習を受けさせたりするなどして,ロボット製作に関する高い指導力を身につけさせた。講習の実施については,県内のリーダー的立場の教員である大東中学校永瀬教諭から内諾を得,日程を確保した。
活動のまとめとして,学内ロボコンを開催し,学生が目標を持ち,楽しくスキルを高めるよう配慮した。また,計画的に中学生の創造性を高めるため,発想法等の技法を指導し,課題解決のための課題を考案させるなど,中学生を指導するための綿密な指導計画を立案した。
2.中学生指導期
中学生指導期では,学生が身につけたスキルを生徒に教えすぎることなく,共感や励ましの中で中学生の達成感が得られることを目的とした指導をさせた。加えて,中学生に対する思考法や発想法等を提供し,中学生に自力で課題解決をさせ,創造性の育成にあたらせた。
また,夏季休業中に,本学部が共催する(共催申請準備中)中学生ロボコン教室へ,学生が補助員として参加し,中学生に指導できるよう,学生が計画した指導法を実践する場を確保した。また,本事業は,地域の教育研究団体との共催であるため,多数の中学校教員が参加した。このため,学生,中学校教員,学部教員の交流の場となり,3者が一体となった人材育成に関する意見交換も行った。
3.大会運営期
大会運営期では,学生に,現場の教師と一体になって,ロボコンという一大行事をやり遂げる経験をさせ,教職志向を高めた。ここでは,本学部学生がロボコンの補助員を務め,大学教員がその審査にあたった。これは,学生と学部教員が一体となった地域貢献の取組の好事例といえる。
また,学生は,円滑な大会運営には,自主的,自発的な行動が求められることを実感した。このことは,自身の行動や判断を見直す機会となり,学生にとっても能力開発の機会となった。
以上1~3の活動について,製作環境整備や学外での講習受講,学内大会の開催,現場の教師との交流などを行い,プロジェクトの質を高め,学生が満足感を持ってやり遂げ,自らの実践的指導力(教師力)向上を実感し,教職志向性が高められるよう再構築を図った。
本プロジェクトのメンバーは1000時間体験学習として募集した。併せて,学生が指導に当たるフィールドを,附属中学校の承諾を得て確保した。
本プロジェクトは,これらの取組により,学部の地域貢献及び学生の教職志向性向上を推進した。本プロジェクトが目指す成果は以下のとおりである。
【創造力ある人材育成】
①教育研究団体,大学教員,学生の3者による協働的で組織的,計画的な人材育成の実施
②学生自身の創造力を伸ばす人材育成
【学部の地域貢献】
①教育研究団体と大学教員と学生が一体となった共催事業の実施や大会運営による3者の関係強化
②ロボコン大会時の審査委員長,審査委員を行うことによる大学教員の地域貢献
③学生の行事支援による地域貢献
【学生の教職志向性向上】
①学生自らの手でロボットをつくりあげる体験を通した,科学技術や環境教育に関する知識・技能の実践的かつ主体的な習得及び興味関心及び知識技能の向上
②現場教員からの指導を受けることや,ロボコン教室,同大会補助員として活動することによる学生と学校現場の教師との交流の深化
③学生の,中学生に対する体験的,課題解決的な指導の工夫による新たな教育方法の習得

プロジェクトの実施状況

H30.5月:1000時間体験学修での島根大学教育学部環境寺子屋ロボコンプロジェクト参加学生の募集

H30.6~8月:学生のスキル向上のためのロボット製作
H30.8月:外部指導の受講(大東中学校)

H30.8月:県中学生ロボコン教室の運営(教育学部共催)とその支援(学生6名参加)

H30.8~11月:附属中学校での,ロボット製作支援

H30.11月:中学生アイデアロボットコンテスト島根県大会へのスタッフ派遣(学生スタッフ6名,審査委員長及び審査委員)

H30.12月:同中・四国大会役員補助及び島根県選手団の支援員としてプロジェクト学生が大会へ同行(広島市,学生3名)

H31.1月:中学生創造アイデアロボットコンテスト全国大会参観
環境寺子屋の活動として,1000時間体験学修に位置づけているロボコンプロジェクトであるが,今年の特徴は,前年度から引き続き活動に参加する学生が増えたことにある。これらの学生は,中学生ロボコンへの関わりが継続され,そこで習得する様々な利点を深く身につけることができた。
 また,学校現場との連携体制を構築してきた。例えば,本学部が共催してロボット教室を実施し,多くの学生がその指導に当たるなどの取組が定着し,教育現場の先生と学部の共同作業が着実に成果をあげてきた。加えて,学生が中学生と合同のバスに乗り,大会期間中,県選手団を支援したり,大会運営スタッフ(審判員など)として活躍したりした。

研究組織
所属・職 氏名 専門分野
大学院教育学研究科教育実践開発専攻教授 ○橋爪 一治 技術科教育方法学
附属中学校教諭 森下 博之 技術科教育学
自然環境教育講座准教授 塚田 真也 理科教育内容学
大学院教育学研究科教育実践開発専攻長教授 松本 一郎 理科教育方法学
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)

本プロジェクトの実施によって,期待される効果は以下のとおりである。
● 中期目標前文1について
⇒社会人力の一つであるイノベーション力の涵養ができた。
● 中期目標前文5について
⇒学生が,中学生との触れ合いや,教えることの喜びを味わう実体験,現場の教師と協力した行事運営等で,自己有用感を実感しつつ教職志向性が向上した。
● 目標Ⅰ-1-(1)①について
⇒これまで,自然科学の分野に直接触れる機会のなかった学生が,自らの手でロボットをつくりあげる体験を通して,科学技術や環境教育に関する知識・技能を実践的かつ主体的に習得させることができた。
● 目標Ⅰ-1-(1)③について
⇒課題解決型のものづくりを提供し,中学生の創造性を育んだ。
● 目標Ⅰ-1-(2)①について
⇒学生が主体となって中学生を指導することにより,教育的実践力の向上が期待できる。また,コミュニケーション力などの教師の資質向上の場となった。
⇒学生自身の行動が,製作物という目に見える結果として表れることで,自分の行動に対する自覚と責任を高めることができた。
● 中期計画3-37について
⇒学生が,島根県の中学校の課外活動の特色等を理解することや県内の教員と共同作業を消化することで,県内の学校教育に親しみを感じ,県内への教員就職率の向上が期待できた。
● 中期計画3-51について
⇒附属中学校は,新たな教育課題に対応した実践的教育活動の強化を計画した。本プロジェクトは,その中の一つに位置づけられ,附属中の計画達成の一翼を担うことができた。
成果の公表は,教育研究団体が制作し,島根県内の全中学校へ配布する広報誌への掲載,賛助団体が発行する広報誌への記事の投稿予定である。