「環境寺子屋」による理数枠への教員候補者名簿の搭載者数増加に関する支援プロジェクト

(2018年度)

プロジェクトの名称 「環境寺子屋」による理数枠への教員候補者名簿の搭載者数増加に関する支援プロジェクト
プロジェクトの概要

 先年のミッションの再定義では、教育学部は第三期中期目標期間中に島根県における小学校教員の占有率35%を確保することを明記した。
 近年、島根県公立学校教員採用候補者選考試験では、小学校の区分に理数枠が設けられ、理科・数学を得意とする小学校教員採用の意思が明確にされた。
 本来環境寺子屋は、理科好き教師の育成を基本的な理念として設立された。ついに、環境寺子屋の修了生が活躍できる場が島根県教育委員会によって与えられたといえる。これまで4度にわたる環境寺子屋の事業成果報告書では、環境寺子屋のプログラムにより理科好き、技術・家庭科好きの学生を増加させたことが報告されている。
 本プロジェクトでは、従来の環境寺子屋のように自然科学好きの学生を増加させるだけではない。理科、算数、家庭科を専門領域として小学校教員になりたいという学生を一人でも二人でも増加させ、理数枠や理科枠で教員採用試験を突破させるには、学生に対してどのような支援の方策があるのかを明らかにするところに特徴がある。
 このことがひいては、第三期中期目標に明記した島根県における小学校教員の占有率確保の画期的な解決策になることが期待されるため、本プロジェクトを行った。なお、SDGsを意識した内容を多く実施できたことが本年度の特徴である。

プロジェクトの実施状況

 本プログラムでは、環境寺子屋の活動に参加する学生の理科好き・自然科学好き・科学技術好きを高めるために次のA~Dのプロジェクトを展開した。詳しい個別プログラムの日時と参加人数については別冊(平成30年度事業成果報告書「環境寺子屋プロジェクト2018」)を参照。

 A)自然科学・理科教育、技術・家庭科の専門家(横浜国立大学・和田一郎先生)による講演会を開催した。
学生・院生20名に加え、理系教員5名の参加があった。
講演後の質疑応答は非常に活発なものとなり、学生の自然科学や理科教育に対する興味関心の涵養を図った。
また、「大学生と考える未来」と題したSDGsミーティングを実施し大学生11名と教員を含む一般市民25名が参加した。地域や学校でのSDGsの事例を学ぶとともに基礎的なSDGsの内容について学んだ有意義な会となった。

 B)補完教育
 大学の一般教養だけでは不十分な部分も多い。学生に対して、自然科学系の科目に関する補完的な教育を行う必要性は高い。実施に当たっては、市販テキストをベースとしながら、独自のプログラムで運営した。プログラムは「理科教育特別講座」として理系の教員を志望する8名の学生・院生に対して講座を運営した。延べ時間16時間におよぶもので、小学校第3~6学年、中学校第1~3学年全単元についての補完教育を実施することができた。

 C)教科書に記載された小学校全領域(エネルギー・粒子・生命・地球・食物・被服)の実験を学生に実体験させた。これは電気のエネルギー変換塾、力のエネルギー科学塾、環境寺子屋ロボコンプロジェクト、被服科学塾、小中学校理科実験講座、日本アルプス立山登山、環境学習塾(松江市環境フェスティバル・小学生の野外学習支援プロジェクト)、ジオパーク学習プロジェクトなど、多数のプロジェクトを実施・運営することができた。

 D)観察・実験を通して、平成29年に告示された小学校学習指導要領で重要視された、課題把握→観察・実験計画→観察・実験→結果→結論に至る科学的探究の過程を学生に実体験させることができた。これは、上記C)のプログラムでの学習に合わせ、特に「理科教育学講座」と「小・中学校理科実験講座」において実施した。

研究組織
所属・職 氏名 専門分野
環境寺子屋室長・教職大学院教授 ○松本 一郎 理科教育方法学
環境寺子屋副室長・自然環境教育講座教授 栢野 彰秀 理科教育方法学
環境寺子屋副室長・自然環境教育講座講師 辻本 彰 理科教育内容学
環境寺子屋室員・自然環境教育講座教授 大谷 修司 理科教育内容学
環境寺子屋室員・人間科学部教授 高橋 哲也 家庭科教育内容学
環境寺子屋室員・人間科学部教授 鶴永 陽子 家庭科教育内容学
環境寺子屋室員・自然環境教育講座准教授 長谷川 裕之 理科教育内容学
環境寺子屋室員・自然環境教育講座准教授 塚田 真也 理科教育内容学
環境寺子屋室員・教職大学院教授 橋爪 一治 技術科教育方法学
環境寺子屋室員・教職大学院教授 大島 悟 教育方法学
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)

 島根県における理数枠の小学校教員採用候補名簿搭載者の増加が期待される。これにより、島根県における小学校教員の占有率35%の目標達成がより容易になることが期待される。
 日本全国の都道府県・政令指定都市における理科枠・理数枠の小学校教員採用候補名簿搭載車の増加が期待される。これらにより、島根大学教育学部の教員就職率及び正規採用率の増加が見込まれる。
教員採用という学生のニーズに直結しているため、環境寺子屋のプロジェクトに参加する学生数の増加が期待される。
 なお、具体的な理数枠の合格者数として4名(島根県理科枠2名、中学校理科2名)の合格者数を出すことができた。