附属中学校理科部と自然環境教育講座との協働による教員養成・教員研修高度化プロジェクト―教育実習と初任研を連結させ、その高度化とともに附属中学校の理科授業改善をも図る―

(2016年度)

プロジェクトの名称 附属中学校理科部と自然環境教育講座との協働による教員養成・教員研修高度化プロジェクト―教育実習と初任研を連結させ、その高度化とともに附属中学校の理科授業改善をも図る―
プロジェクトの概要  本プロジエクトは、本学第三期中期目標3「社会との連携や社会貢献及び地域を志向した・教育・研究に関する目標」④及び、4「その他の目標」(3)の達成に、中学校理科の面から寄与しようとするものである。
 中期目標3④の達成のために、「学校教育実習Ⅲ」及び「Ⅳ」の高度化を行った。実習Ⅳ終了段階で、単元計画作成力と一時間の学習課題を明示した授業ができる中等教育教員としての力量を身につけさせようとする取り組みを、先年度から附中理科部と講座が取り組んでいる実習生に対する指導の枠組み(学習課題の構造)に基づいておこなった。
 この枠組みの特徴は、実習生が生徒に課題を明示しながら授業する点である。附中理科部教員がこの枠組みで附中の生徒に対しても授業を行った結果、附中の生徒に対する授業改善にもなった。すなわち、生徒に課題を明示し、その課題を解決し結論に至るタイプの授業が、現在附属中学校理科部で常日頃行われているということである。これが、本年度の島根県の新採用教員に対する初任者研修において島根県教育センター側から第一の課題としてあげられている「一時間のねらいが明確な授業」と図らずも合致した。この点が、教育実習(教員養成)と初任研(教員研修)を連結する視点となった。
 中期目標4(3)の達成のために、附属学校園が今年から島根県教育センターの委託を受けておこなう初任者研修の高度化を行った。附属学校における初任研終了段階で、一時間のねらいが明確な授業かつ教師が一方的に教え込まないような授業ができるスキルの獲得を目指した。先年度から附中理科部と講座が取り組んでいる、附属中学校生徒に対する指導の枠組み(学習課題と結論の明示)に基づいて師範授業を実践した。
プロジェクトの
実施状況
本プロジェクトでは、本学第三期中期目標3④及び4(3)を達成するために、次のA~Hのプログラムを展開した。
  • 2016年5月末~6月初:教育実習生に対する「実習Ⅲ」の指導学習課題の構造の視点で、実習生の単元計画作成力を向上させるための指導(附中理科部・講座)を加える。中期目標3④の達成を目指した。
  • 2016年6月末:島根県教育センター初任者研修における師範授業
     学習課題の構造に加え、結論を明示した授業提案を初任者研修(附中理科部)で行った。中期目標4(3)の達成を目指した。
  • 2016年6月末~7月末:初任者研修における師範授業のふりかえり
     今後の新採研のための授業提案の在り方の検討を通し、同じ課題を有する教育実習生へのフィードバックを検討(附中理科部・講座)した。中期目標3④及び4(3)達成のための資料を得る。
     上記、B及びCの取り組みの成果と課題は『日本理科教育学会第65回中国支部大会論文集』に報告されている。
  • 2016年7月中旬~10月下旬:教育実習生に対する「実習Ⅳ」及び「学校教育実践研究Ⅱ」の指導
     Cにおいて明らかになった成果と課題に基づき、学習課題の構造及び結論を明示した指導の枠組みで「実習Ⅳ」の高度化を図る指導(附中理科部・講座)を加えた。中期目標3④の達成を目指した。
     上記A及びDの取り組みの成果と課題は、2017年度に開催される、日本科学教育学会第7回研究会で口頭発表の予定である。昨年度の取り組みの成果と課題は『科教研報』(2016)に報告されている。
  • 2016年9月下旬~11月上旬:「実習Ⅳ」のふりかえり
     「実習Ⅳ」B班と並行しながら、Dにおいて教育実習生に加えた指導の検討を行った。
     今後の教育実習の高度化のための在り方の検討を通し、同じ課題を有する新採用教員に対する初任研への授業提案へのフィードバックを検討(附中理科部・講座)した。中期目標3④及び4(3)の達成のための資料を得る。
  • 2016年10月~3月:「実習Ⅱ」の指導
     Eにおいて明らかになった成果と課題に基づき、次年度教育実習を行う第2学年次学生に対し、学習課題の構造及び課題を結論を明示した授業の在り方に関する理論的(栢野)かつ実践的指導(附中理科部・講座)を行った。次年度、中期目標3④及び4(3)の達成のための準備となる。
  • 2016年度全般:附属中学校における授業実践
     A~Fにおける教育実習及び教員研修の高度化を図る取り組みの成果をフィードバックする授業を附属中学生徒に対して行なった。
     この取り組みの成果と課題は『日本理科教育学会第66回全国大会論文集』(2016)に報告されている。
  • 2017年3月末:成果公表
     年度末には、先年度に引き続き『実践事例集』(2017)を刊行した。
     上記A~E、Gの取り組みの実際は『島根大学教育臨床総合研究』(2017)に投稿中である。
研究組織
所属・職 氏名 専門分野
自然環境教育講座・教授 ○栢野彰秀 理科教育方法学
自然環境教育講座・教授 野村律夫 理科教育内容学
自然環境教育講座・教授 大谷修司 理科教育内容学
自然環境教育講座・教授 西山 桂 理科教育内容学
自然環境教育講座・講師 辻本 彰 理科教育内容学
自然環境教育講座・講師 塚田真也 理科教育内容学
自然環境教育講座・特任講師 原田 聖 理科教育内容学
附属中学校・教諭 野﨑朝之 理科教育実践学
附属中学校・教諭 大山朋江 理科教育実践学
附属中学校・教諭 園山裕之 理科教育実践学
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)
 本学第三期中期目標3④及び4(3)達成への大きな寄与が期待される。
 教育実習の高度化によって、現在の新採用教員に求められている資質・能力が教育実習終了段階において既に獲得されることが期待される。中等教育を担う質の高い理科教師養成のモデルケースとして全国への成果公表が可能となる。
 教員研修の高度化によって、理科教員だけには限られるが、島根県が現在の新採用教員に求めている資質・能力が研修後に獲得されることが期待される。このことによって、島根県の中等教育における理科授業の質的向上も期待される。大学と教育センターが連携した教員研修のモデルケースとして全国への成果公表が可能となる。
 全国への成果公表は『科教研報』(2016)、『日本理科教育学会第66回全国大会論文集』(2016)、『日本理科教育学会第66回全国大会論文集』(2016)とともに、『島根大学教育臨床総合研究』(2017)に投稿中である。
 教育実習及び教員研修を担当する附属中理科部の教師の資質・能力が向上し、附属中学校の生徒に対するより質の高い授業が提供できる。このことによって、生徒・保護者の満足度の向上が期待される。
 『実践事例集』(2017)は、松江市及び近郊の中学校及び島根県教育委員会・島根県教育センター、島根県中学校理科教育研究会等に配付した。地域の中学校及び教育行政に実践研究成果をフィードバックした。