特別支援教育「知」の創造 ~学び続ける教師を育てる地域連携・貢献プロジェクト~

( 2015年度)

プロジェクトの名称

 特別支援教育「知」の創造
~学び続ける教師を育てる地域連携・貢献プロジェクト~

プロジェクトの概要
 次に示す取組を通して、特別支援教育に係るよりよい指導・支援の具体とその在り方を検討するとともに、現職教員の資質向上と学部教育活動の補完を図る。
島根大学特別支援教育研究会の開催
 今年度新たに特別支援教育の推進を図る研究会を組織し、学部生・院生と現職教員の「学びの場」を創造する。
学校(園)訪問支援の実施
 大学教員が幼稚園や学校からの訪問要請等に応え、教育現場の主体的な学びを支援するとともに、そのための研修の在り方を検討する。
ゲスト・ティーチャー招聘授業の実施
 特別支援教育に関する専門家や保護者等をゲストとして授業に招き、講義と協議を通して、子ども支援の多面的理解を図る。
高等学校との連携による学部での特別支援教育カリキュラムの改善
 特別支援教育に関する学部生の意識調査・高校での授業の実施状況調査を行い、学部での特別支援教育に係るカリキュラム検討を行う。
教職大学院における地域連携・貢献型カリキュラムの開発
  ①~④を実施しながら、山陰の教職大学院において求められていることをふまえたカリキュラムについて構想する。
プロジェクトの
実施状況
島根大学特別支援教育研究会の開催
 学校(園)で活躍する現職教員による事例・事象の提供とそれに基づく協議、大学教員による講義を行った。
 ◇第1回 テーマ:自閉症スペクトラム障がいのあるAさんのコミュニケーション」
話題提供者:特別支援学校教諭 参加者:36名
 ◇第2回 テーマ:「すわる」「みる」「きく」で集中力を高めよう
話題提供者:小学校教諭 参加者:84名
◇第3回 テーマ:児童の興味・関心を拡げる授業づくり
話題提供者:特別支援学校教諭 参加者:29名
 ◇第4回 テーマ:特別支援教育の視点を取り入れた英語学習
話題提供者:中学校教諭 参加者:81名
学校(園)訪問支援の実施
 主に松江市内の保育所・幼稚園、小学校、特別支援学校に訪問し、公開保育・授業後に研究協議を行うスタイルで実施した。また授業の一環として学生も訪問し、「生」の授業や児童生徒と関わることができた。さらに、市教委や市特別支援教育研究会担当者と、現職教員の主体的な研修の在り方について協議した。
ゲスト・ティーチャー招聘授業の実施
 幼稚園(幼保園)や学校の現職教員、島根県及び松江市教委特別支援教育担当者、松江市保健師、児童発達支援センター長や障がい児者支援施設長等の専門家、並びに障がいのある子を養育している保護者の延べ15名をゲストとして授業に招き、あるいは訪問した。
高等学校との連携による学部での特別支援教育カリキュラムの改善
 教育学部全学生及び、他学部の教職科目受講の学生に対し、小学校から高等学校までに受けてきた特別支援教育の理解に関する授業の内容と受講の効果及び学生がもつ障がい児(者)に対する意識についてのアンケート調査を行った。現在、結果を考察し、まとめているところである。
教職大学院における地域連携・貢献型カリキュラムの開発
 上述した話題提供者、専門家、専門機関職員、保護者との意見交換を通して得られた知見をふまえながら、地域と連携し地域に貢献できる教職大学院像やカリキュラムを構想した。
研究組織
所属・職 氏名 専門分野
心理・発達臨床講座・教授 ○原 広治 障害児教育
心理・発達臨床講座・教授 稲垣卓司 障害児病理
心理・発達臨床講座・准教授 樋口和彦 障害児心理
教職大学院設置準備室・特任教授 三島修治 教育実践論 特別支援教育
教職大学院設置準備室・特任教授 池尻和良 教育実践論 特別支援教育
言語文化教育講座・准教授 大谷みどり 英語科教育
初等教育開発講座・准教授 石野陽子 発達心理学
初等教育開発講座・講師 上森さくら 教育方法学 生活指導論 教師教育学
附属学校園・教諭 宮崎紀雅 学校教育 特別支援教育
島根県教育庁特別支援教育課・課長 三島賢隆 教育行政 特別支援教育
松江市発達・教育相談支援センター「エスコ」・所長 小脇 洋 教育行政 特別支援教育
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)
 授業において、地域の学校(園)で活躍する現職教員をはじめ、福祉機関や教育行政、保健・福祉行政の担当者、あるいは保護者から、まさに現場で起きている「生」の事例・事象の話題提供を受け、それらに基づいて協議をすることができた。このことは、学生にとって、大学での学びを実社会と往還させて考えながら、学びをさらに深めるとともに、対象や事象、制度をより実感として理解することにつながっている。
 また、今年度初めて開催した特別支援教育研究会では、そこで得られた学びを学校現場に持ち帰り、応用、実践することができるとともに、参加者同士がつながりあうことで幼児児童生徒への支援がより充実することが期待できる。参加した学生にとっては、先述した往還型学習に発展させることができると考える。
 さらに、学生に対して実施した、高等学校までに受けた特別支援教育に関する授業についての調査結果をふまえながら、学部教育カリキュラムの在り方を検討し、授業の内容や構成の改善が、より具体性をもって行うことができている。
 今後は、これらの成果を学部や教職大学院における授業やカリキュラムの改善に応用していくとともに、より一層、地域の学校(園)や施設、教育委員会等と連携した実践が期待できるなど、実際的な活動に活用していきたい。