子どもたちの日常生活上の「困り感」解決プロジェクト

( 2013年度)

プロジェクトの名称 子どもたちの日常生活上の「困り感」解決プロジェクト
プロジェクトの概要

 学生と教員が協働し,子どもたちの困り感の解消を図る。学生には,子どもたちが日常の行動において,どんな困り感に直面しているのかを観察させたり,教師への聞き取りをさせたりして把握させる。そして,課題に応じた改善策を企画・提案させる。活動は1000時間体験学修等に位置づける。一方,プロジェクトメンバーの大学教員は,学生が見出した困り感を科学的に説明したり,改善策の有効性を検証したりする。
 なお,障がいのある子どもや低年齢の子どもは,個人差が大きく困り感も一人一人違うため,ユニバーサルデザインの視点をもって解消を目指す。
 しかし,あえて困り感のある環境におくことが将来の巧緻性獲得の日常的訓練である場合もある。そこで,改善の提案には,環境や道具の改善ばかりでなく,施設や道具使用の訓練ができる教具・遊具,自然に技能が身につく遊びの開発等を含めて困り感を解消する。
 本プロジェクトは3年間にわたり実施する。各年度の主な活動を以下に示す。
【1年目】
 ①(教員)協力校の開拓,日程調整,参観に必要な機材の購入等プロジェクト推進準備
 ②(学生)参観や聞き取りによる困り感の抽出
 ③(教員)困り感の科学的な検討着手
 ④(学生)困り感解消の企画・立案
【2年目】
 ①(教員)新たな協力校の開拓,年間の日程調整等
 ②(学生)参観や聞き取りによる困り感抽出の継続
 ③(教員)困り感の解明研究の継続
 ④(学生)学校等への困り感解消案の試行
 ⑤(教員)困り感解消効果の科学的検討着手
【3年目】
 ①(教員)日程調整等
 ②(教員)困り感解消効果の検証と改善案の修正
 ③(教員・学生)学校等への科学的根拠のある困り感解消の提案
 ④(教員・学生)報道機関への情報提供等成果公表

プロジェクトの
実施状況

1.実施内容
本プロジェクトの実施に当たり,次の事項を実施した。
 ・附属幼稚園への協力依頼
 ・プロジェクトに参加する学生の募集
 ・附属幼稚園への学生の紹介と挨拶
 ・附属幼稚園の教師と学生による訪問日や日課,行事の打合せ
 ・訪問による観察・記録機材の準備
 ・訪問しての観察・記録
 ・観察・記録を通した困り感の抽出
 ・困り感解消の企画立案

 

2.結果
 本プロジェクトを通して,学生が,抽出した困り感のうち解消を企画した案件は,個人の荷物を掛けるフックの間隔が狭く,低いため,のびのびと使用できる荷物掛けに変更するというものであった。現在のところ,構想ができあがり,実際に改善したものを設置するため製作を始める段階にある。
 一方,教員は,文献調査や関係学会への参加,研究者への聴き取りなど,困り感の解消に向けた準備を行ってきた。学生が抽出した困り感にかかわらず,観察・記録を多面的に検討しており,今後研究に取り組んでいきたい。

 

3.成果と課題
1)成果
 ○附属幼稚園からの全面的な支援を得ることができ,本学部と附属幼稚園の連携が現場レベルで実現できた。
 ○幼児と接したことのない学生が,幼児との関わりを深め,その中で観察を通して困り感を発見しようとする姿がうかがえた。
 ○学生が,幼児の日常生活に着目し,荷物掛けに関する困り感を抽出し,その解消を企画・立案した。
 ○教員は,学生が抽出した困り感を解消するための科学研究に着手する準備を行った。
2)課題
 ○学生が発見した困り感を,科学的な解消に落とし込む作業に移行する必要がある。
 ○幼稚園や園児に対し,困り感が解消された状態になく,早急に具体物を作成し提供を行う必要がある。

 

【学生からの感想】
 最初の数回は幼児との関わり方がわからず,ぎこちなく接してしまい,先生方に指導を受けることも何度かあったが,少しずつ慣れて,幼児の遊びに参加しながら観察できるようになった。幼児との関わり方が深くなったからこそ困り感が見えてきた気がする。幼児の困り感という課題をいくつか見つけることができたので,今後の活動では,その課題を解決する力を付けていきたい。

研究組織
所属・職 氏名 専門分野 
人間生活環境教育講座
教授 ○橋爪 一治 技術科教育,情報教育
教授 舟木 賢治 幼児教育,細胞生物学,発生生物学,遺伝学
教授 高橋 哲也 被服学,繊維高分子,環境材料,生化学
准教授 西田 忠男 幼児教育,道徳教育
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)

 

 子どもと接する学生の意識が,安全や困り感に対し敏感になり,子どもの生活環境を注意深く見守り,環境の改善を図る実践的態度や工夫する能力が向上する。このため,質の高い教員養成が実現できる。
成果の公表は,困り感に対する改善を学校や保育所等へ提案するとともに,報道機関への情報提供を行う。
学生と教員が一体となって,子どもたちの困り感を解消するという社会貢献につながる。