家庭科教員および幼稚園教諭養成における教育実践力をつける1000時間体験学修システムの構築-食生活分野について-

( 2012年度)

プロジェクトの名称 家庭科教員および幼稚園教諭養成における教育実践力をつける1000時間体験学修システムの構築-食生活分野について- 
プロジェクトの概要

 子ども達や大学生の食生活の中で重要な地位をしめる「おやつ」と「朝食」に関わる1,000時間の体験学修を前期及び後期に実施し、それらの活動に参加した学生達の参加状況や振り返りなどの調査を実施する。これらの活動は、いずれも学生主体で計画・実施し、幼児、小学生や大学生に食に関するサポート活動を行うものである。
 調査結果を詳細に分析することによって、大学における通常の講義、演習、実習や実験などに加えて、どのような体験活動を行うと、実際の指導に際して自信を持てるようになるのか、すなわち教育実践力を身に付けることができるのかについて明らかにする。
 これらの結果から、食生活分野において教育実践力をつけるために必要な1,000時間体験学修のシステムを検討し、提案する。
 以下のような体験活動をPDCAサイクルに基づいて実施する。
(1)附属幼稚園親子活動そらおやつ教室
(2)ビビットひろばおやつ教室
(3)島根大学生協の朝食プロジェクト

プロジェクトの
実施状況

      

次のようなプロジェクトを実施した。

 

(1)附属幼稚園親子活動そらおやつ教室
 前期2回、後期2回の計4回実施した。平日の午後に開催するため、参加学生は計16人であった。学生たちの振り返りシートの得点から、「子ども理解」、「学習支援の指導技術」、「コミュニケーション」をとる力を特に身に付けることが可能であったことが窺えた。学生の感想として1年生では「基礎体験で実際に子どもと関わる活動は初めてでした。子ども達のワクワクした顔や嬉しそうに笑っている顔がとても印象に残っています。・・・私は、まだ子どもと関わる事や対応の仕方が分からず、もっと上手に話したかったなという反省があるので、様々な体験をしてうまく関われるように頑張りたいです。」3年生は「実習Ⅴで幼稚園に行っていたので、幼稚園で過ごす子どもたちと、親子または家族と一緒に過ごす時に違いをみることができた。また、今回4歳の子ども達が調理を行う際の注意点や親子活動を行う利点などを考えることができたので、今後に活かしていきたい。」というように、1年生にとっても教育Ⅴを終えた3回生にとっても、それぞれの段階に合わせて実践的な活動を行う意義が認められた。

 

自己紹介&説明
幼稚園児へのサポート

 

(2) ビビットおやつ教室
 前後期各1回ずつの計2回実施した。参加学生は、25人であった。この活動においても、おやつ教室の計画・準備・当日の運営について、学生主体で取り組んだ。学生達の振り返りシートの得点からみると、子ども理解、教科基礎知識・技能、リーダーシップ、コミュニケーションや探求力を身につけることに効果があったことが理解できた。自由記述による感想を見ると、「初めて参加したが、子ども達と一緒にパンケーキを作ることで、小学校3年生~6年生の特徴が少し分かった。安全面には注意して指導するように心がけた。課題として残ったことは、担当グループの一人の男子にあまりよい声がけができず、全員とのコミュニケーションがとれなかった。次回もこの活動に参加して、今回の課題を克服したい。」3回生は「今回、5回目のビビットおやつ教室の参加となった。班の子ども達が協力する姿が見られてよかった。参加して特に困ったということがなく、子ども達と一緒になって楽しくパンケーキを作ることができてよかった。次の回にも参加して、また新たな経験を積みたいと思う。」というように、参加を重ねることによって新たな学びが生じており、食生活分野において体験学修の利点が明確となった。

 

おやつの役割説明
説明方法の工夫

 

(3) 島根大学生協の朝食プロジェクト 
 島根大学生協食堂では、4月に新入生を対象に朝食を食べる習慣をつけるために、朝食プロジェクトを1週間実施している。この朝食プロジェクト期間中に、1年生が実際にはどのような朝食を食べているのかを写真撮影によって明らかにするとともに、食生活に関わるアンケート調査を実施し、食生活の自己管理能力を育成するための基礎的な資料を収集した。このプロジェクトには3人の学生が参加し、大学生の食生活へのサポート力をつけることができた。

 

生協食堂の朝食会
新入生との朝食会


 以上のように、家庭科教員および幼稚園教諭養成において教育実践力をつけるために、食生活分野で1000時間体験学修システムをどのようにするかについて、(1)附属幼稚園親子活動そらおやつ教室、(2)ビビットひろばおやつ教室、(3)島根大学生協の朝食プロジェクトの3つに取り組んだ。その結果、学生主体による計画・立案・準備・実行・評価のプロセスを経ることによって、学生達の教育実践力を付けることができた。幼児から高校生までの成長・発達に関わる幼稚園教諭と家庭科教員は、子どもの成長・発達の見通しをもって指導することが重要であるので、今回のような幼稚園、小学生や大学生を対象とするプロジェクトに参加することが、真の教育実践力をつけることが可能といえる。

研究組織
所属・職 氏名 専門分野
人間生活環境教育講座・教授 ○多々納道子 家政教育学
人間生活環境教育講座・准教授 鶴永陽子 食物学、食に関する教育
初等教育開発講座・准教授 丸橋静香 家政教育学
島根大学教育学部
・附属幼稚園副園長
赤木寛子 幼児教育、幼稚園管理・運営
島根大学教育学部
附属小学校・教諭
竹吉昭人 家庭科教育
島根大学教育学部
附属中学校・附属学校主事
井上富美子 家庭科教育
島根大学生活協同組合 吉谷 淳 食育担当
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)
 本プロジェクトは学生達に食生活分野の教育実践力をつけるため、教育実習とは異なった幅広い体験ができる教育学部主催のビビット広場や附属幼稚園の親子活動そらおやつ教室、大学の生協食堂と連携した朝食プロジェクトなどの1,000時時間体験学修に参加することによって、教育実践力をどのように身につけることが可能なのかを明らかにする。このような実践をふまえて、学生たちが教育実践力をつけるために必要な1000時間の体験学修システムについて提案した。
 本取り組みの成果を明らかにしたので、今後さらにデータを分析し、学会等で発表するとともに、ホームページによって公開する。