環境寺子屋による自然科学教育力の修士レベル化

( 2011年度)

プロジェクトの名称  環境寺子屋による自然科学教育力の修士レベル化
プロジェクトの概要 【具体的な実施内容】
教育GPで培った環境寺子屋の自然科学力育成プログラムを活用し、参加した大学院生は多様な体験活動を行った。具体的には、入塾した大学院生は基礎領域、物質とエネルギー領域、生命と地球・宇宙領域、くらしの科学領域の4つの領域からプログラムを選択させて活動した。大学院生は、企画運営型に配属し、学部生に対して指導的な立場で活動に参加させた。附属学校や一般の子どもを対象としたプログラムの企画や指導も行い、受け身でなく、より実践的な指導的な立場から活動に参加させた。
環境寺子屋では、体験学修を興味や好奇心だけでは終わらせないように、積み上げてきた体験を客観的に評価する必要性から自然科学力プロファイルシートを構築してきた。新たに、大学院生や現職教員の自然科学力の向上を可視化する大学院生プロファイルシートを構築した。このプロファイルシートシステムは、環境寺子屋で自然科学力に特化して設定・運用しているものをベースに独自の視点で見直し、作成したものである。
プロジェクトの
実施状況

以下に示す活動により、環境寺子屋による自然科学教育力の修士レベル化を模索した。具体的な実施した活動内容を示す。


【星空・地球研究塾】
今回の体験学修では現職教員への参加を呼びかけ、今年度は4名の参加があった。
①星座早見盤の見方と指導のしかた
星座早見盤の見方や生徒への教え方について説明するとともに、天球の考え方、北極星の見つけ方、緯度による北極星高度の関係について説明した。同時に、恒星の種類や宇宙の起源、宇宙探査の楽しさや問題点についても説明した。また天体望遠鏡の構造や移動・分解の仕方の復習を行った。
②天体写真や天体シミュレーションを用いた実習
今回の観望会ではあいにくの天候のため実際の観察はかなわなかった。そのため、アポロミッションなどの説明、天の川銀河の大きさと太陽系の位置関係・スケール感覚などを天体写真および天体シミュレーションを用いて行った。加えて、金星の教材化の説明を行った。天体観察のうち特に、惑星の観察において内惑星である金星の地球との位置関係に着目させ、「大きさ(視直径)」と「形」の両面からターンテーブルを用いたクラス全体での同時観察の技法について学んだ。両活動とも、大学院生は企画運営型のプログラムとして、学部生に対して指導的な立場で活動に参加させ、教育実践力を身につけさせた。


【秋鹿田んぼ塾】<稲刈り・成果報告会>
今年収穫した米の試食をするために、昼食の準備を全員で行った。秋鹿町の共同稲作者である吉岡氏、加藤氏のご好意で、そば粉を提供していただき、両氏の指導をうけながら手打ちそばのつくり方を学んだ。収穫した米と、ソバを試食した後に、各自が今年一年間の体験を振り返り発表を行った。その際、本体験活動を深く理解し、振り返り行いやすくなる手助けとして、本活動の背景、目的等を説明するとともに、過去6年間の取り組みについての紹介も行った。さらに、修士論文を書いている院生がミカヅキモを含むチリモ類について紹介を行い、大学院生が学部生に対する指導を行った。


【被服科学塾】
日本では平安時代にどのような衣服を身にまとっていたのか、またその衣服はどのような染料を用いてどのように染色されていたか、「延喜式」の紹介を交えながら、大学院生による講義を行った。また、染色のメカニズム(色素と繊維の結合、媒染剤などについて))や色の概念についても教員が講義し、染色への理解を深めた。

 

院生によるプレゼンテーション
(秋鹿田んぼ塾)
院生による実験指導
(被服科学塾)

 

 その後、平安時代にも使用されていた植物染料を用い、実際に染色実験を行った。塾生が実際の学校現場で指導が行いやすいように、輪ゴムや割りばしなど、身近なものを用いた防染の方法を指導するとともに、染料に関しても学内にある身近な植物でも染料となりうることを提示した。本活動は、大学院生の教育実践としても有意義であった。 

研究組織
所属・職 氏名 専門分野
初等教育開発講座 松本 一郎 地学
自然環境教育講座 大谷 修司 生物学
人間生活環境教育講座 ○高橋 哲也 被服学
自然環境教育講座 西山  桂 化学
人間生活環境教育講座 鶴永 陽子 食物学
初等教育開発講座 百合田真樹人 政治哲学
自然環境教育講座 辻本 彰 地学
自然環境教育講座 塚田 真也 物理学
自然環境教育講座 秋重 幸邦 物理学
自然環境教育講座 秦 明徳 理科教育学
自然環境教育講座 野村 律夫 地学
環境寺子屋(専任) 高須 佳奈 理科教育学
環境寺子屋(専任) 山下稚香子 家政学
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)

【学問的効果】
大学院生が新たに活動に加わることで、より体系的に理科の基礎的な内容に触れ、学部生の自然科学に対する不安感を取り除き、積極的にかかわる姿勢を育てることが期待できた。 このプロジェクトにより、内容を格段に向上充実させることにより、さらに高いレベルの自然科学の知識と教授法を身に付けた実践的な教員の養成が可能となった。

【社会的効果】
サイエンスアカデミーやビビッド広場の活動でも大学院生が企画立案し、指導者の立場で企画運営する。大学院生が加わることで、活動をさらに充実させることができ、大学周辺の一般の小学校,附属学校園の子どもと保護者に対して自然科学への興味関心を高めるために大きな役割を果たすことが高まった。 また、この活動を通して島根県教育委員会等との外部の教育機関との連携が深まり、また現職教員の自然科学力のレベルアップが図られることが大いに期待される。