中国における小学校英語教育の先進事例を視察

 

 去る2012年2月29日、3月1日の両日、中国上海市の小学校を訪問し、英語教育の実態を視察してきました。

訪問したのは、本学部の大谷みどり准教授(英語教育)、国際交流課の前森田博義係長と私、槇原(国際交流プロジェクト委員)の3名でした。中国では2001年から小学校に英語教育が導入されましたが、その際、国語(中国語)、算数とならぶ主要3教科の一つと位置づけられました。この辺りからすでに意気込みの違いを感じてしまいますが、実際の授業を見学させてもらい、彼我の違いに驚きました。合わせて10名あまりの英語教員からの聞き取りも大変有意義なものでした。

 訪問先は、上海市実験学校(上海師範大学附属校でもある)、福山正達外国語小学、海桐小学の3校で、5クラスの授業を見学しました。まず、学年を問わず、授業はすべて英語で進められ、児童たちも活発に英語で発言していた点が印象的でした。ネイティブによる授業は1クラスだけで、他はすべて国内教育機関で養成された、留学経験のない中国人教員によるものでした。しかし、ほとんどが20代の彼女たちの英語は実に流ちょうで、くせのない発音だったように思います(見学した授業の教師は全員女性でした)。

 さしあたりの印象にすぎませんが、中国の英語教育は「使える英語」、つまり仕事や日常生活において外国人と接する際に不可欠のコミュニケーション手段を学ばせることに重きを置いているように思われました。もちろん、上述のようにカリキュラム上の位置づけが違うほか、小学校も教科担任制であることや、今回視察できた学校が最先進校であり、おそらくは極めて深刻な地域格差があること等の前提条件を考慮に入れず、中国方式を安易に礼賛すべきではないでしょう。しかし、中国の英語教育、そして上海の実践事例から学ぶべき要素が多々あることはたしかです。大谷准教授がいずれ専門的観点から詳しいレポートをまとめ、発表する予定です。

(槇原茂)

 

上海師範大学:夏広興教授ほかと
上海市実験学校2年生の授業
福山正達外国語小学4年生の授業
海桐小学の英語教員との交流