教職大学院の小中一貫教育支援-系統的なカリキュラム開発による「電気あそびから概念形成」へのゆるやかな移行-

(2017年度)

プロジェクトの名称 教職大学院の小中一貫教育支援-系統的なカリキュラム開発による「電気あそびから概念形成」へのゆるやかな移行-
プロジェクトの概要  教職大学院の重要な使命は,地域の学校経営に参画するなどして,学校教育目標の達成に寄与する地域貢献であると考える。一方,小中一貫教育を経て義務教育学校化が推し進められている。小中一貫教育や義務教育学校の特徴は,ゆるやかな段差の系統的な教育内容が展開できることである。各一貫教育学校園では,この特徴を生かした具体的取組をどう実践するか,創意工夫を凝らして検討しているところである。
 ところで,中学校で理科や科学技術が嫌い(苦手)だとする生徒が増加するとの報告があり,その要因の一つが電気学習だとの指摘がある。電気は目に見えず,素朴概念では解決できないにも関わらず,中学生になり,唐突に,目に見えない電気の理論や知識を学ばなければならないためだと考える。
 そこで,本プロジェクトでは,教職大学院と学校現場とが共同し,電気学習の困難さなど学習指導上の課題を,小中一貫教育の特徴を生かし,ゆるやかな段差の系統的な教育内容を用いて解決することを目的とした。具体的には,科学技術教育の中でも,電気学習に焦点を当て,電気に触れ慣れ親しませる学習からスタートし,学年を追うごとに理論的な学習に移行するカリキュラムを開発した。
プロジェクトの実施状況  教職大学院の学生が,松江市内の公立小中学校(意宇学園,八雲小学校及び八雲中学校)において,標題にある指導内容や取り扱う教材を開発するとともに,それに基づく実践授業を行い,教育効果を検証した。
「電気への親しみ」から「理論学習」への緩やかな移行を実現するためのものづくり教材として,「静電気モーター」と「クリップモーター」を開発し,またそれを小学生にも中学生にも指導する授業計画を併せて開発した。開発した教材を用いて,以下3つの研究を行った。
  1. 考案したものづくり教材を用いた授業により,子どもが電気に親しむことができるか否かを明らかにするための「電気の親しみ」に関する研究
  2. 子どもにアブダクションを促す教師の働きかけが,子どもが理論的な考えに基づいた工夫をする際に有効に働くか否かを明らかにする「アブダクション」に関する研究
  3. 子どもがものづくりで工夫する際にどのような条件を設定することで技術的な工夫に着目しやすくなるのかを明らかにする「技術的な工夫への着目」に関する研究
研究組織
所属・職 氏名 専門分野
教職大学院特任教授 ○長 和博 理科教育学,学校経営学
教職大学院教授 橋爪 一治 技術科教育方法学
教職大学院教授 松本 一郎 理科教育方法学
自然環境教育講座准教授 塚田 真也 理科教育内容(物理)学
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)

○教職大学院による地域貢献として,地域の学校へのよりよい教育内容の提供ができた。
○科学技術教育(電気学習)を,小中一貫教育の特徴を生かして展開することで,科学技術に興味関心を持つ子どもが増えた。

具体的には,

  1. 考案したものづくり教材を用いた授業により,子どもが電気に親しむことができるか否かを明らかにするための「電気の親しみ」に関する研究
  2. 子どもにアブダクションを促す教師の働きかけが,子どもが理論的な考えに基づいた工夫をする際に有効に働くか否かを明らかにする「アブダクション」に関する研究
  3. 子どもがものづくりで工夫する際にどのような条件を設定することで技術的な工夫に着目しやすくなるのかを明らかにする「技術的な工夫への着目」に関する研究

 本経費で得られた成果は,本学教職大学院の成果発表会及び成果報告書等により公表された。