令和2年度 第17回教育学部アカデミックカフェを開催しました。

「第17回 教育学部アカデミックカフェ」を開催しました。

 

1.発表者           槇原茂 教授

2.日 時           令和3年2月24日(水)15:45~16:40

3.方 法           オンライン会議形式

4.題 目           「近代フランス農村における共同用益権」

  

 今回のアカデミックカフェでは、西洋史学(特にフランス近代史)がご専門の槇原茂先生にご登壇いただき、科研費を獲得されて今まさに取り組んでおられるご研究のうち、19世紀フランスの共同放牧慣行の存廃をめぐる問題について、お話しいただきました。

 中世以来、ヨーロッパの農村共同体(村落)において住民たちが有していた慣習的な権利である用益権(薪の伐採、木の実の採集、落ち穂拾いなど)のうち、共同放牧権に着目され、フランス革命期の諸法典により廃止の方向性が示され、1889年には共同放牧廃止法が制定されたにもかかわらず、実際にはフランス各地において長く存続したことを紹介されました。具体的には、ナディーヌ・ヴィヴィエの新しい実証的研究をふまえ、フランス東部フランシュ=コンテ地方ドゥー県を事例に、共同放牧権がどのように存続していたのかについて、ご研究の概要を示されました。そして、共同体的諸権利を農業の近代化を妨げる遺物として否定的にとらえてきた、かつての歴史学を批判されて、そこに積極的な意味を見出すことの重要性を指摘されました。特に、1889年の共同放牧廃止法について詳細に検討されたこと、20世紀前半における共同放牧権の実態を追究されていることなど、大変興味深く拝聴しました。

 発表後のディスカッションにおいては、権利と義務の関係性、あるいはイギリスや日本との比較など、多様な視角からの質疑が交わされました。多分野の専門家が相互に研究的な観点で交流するアカデミックカフェの意義を、再認識する機会ともなりました。