令和元年度 第14回教育学部アカデミックカフェを開催しました。

「第14回 教育学部アカデミックカフェ」を開催しました。

 

1.発表者           福田景道 教授

2.日 時           令和2年1月29日(水)17:00~18:00

3.場 所           島根大学教育学部 学部長室

4.題 目           「「国語科教科書の中の『大鏡』」

  

 今回のアカデミックカフェでは、平安時代を代表する歴史物語であり、定番教材として使用されることも多い『大鏡』を題材として、その概要や特徴、さらには教科書における取り上げられ方の問題点などについて、通説的理解への批判を交えてお話しいただきました。

なかでも、花山天皇出家退位事件(984年、「粟田殿」藤原道兼が花山天皇をそそのかして出家・退位させた寛和の変)の真相を暴露したものと評されてきた「花山院紀」(『大鏡』)は、高校教科書に取用される頻度が非常に高いので、まず東京書籍『新編古典』の本文を読みながら、そのストーリーの概要を紹介されました。

 そして、『大鏡』は人間像を鮮明に描き出すことによって『栄花物語』の欠陥を補って真実を論じたものと評されているが、実際には、両書は相互に補完し合うセットのような関係にあり、『大鏡』が藤原道兼の行状を悪しざまに描いているのは、藤原道長(道兼の弟)の栄華の正当性を述べていく前提条件として創作された脚色であること、教科書のような断片的な取り上げ方では、そのような作品全体をとらえる視点を欠いてしまうことになり、理解の妨げとなっていること、などを指摘されました。

 発表後のディスカッションにおいても、作品そのものの理解の仕方や、教科書における取り上げられ方の問題をめぐり、活発な質疑応答が行われました。