入門期セミナーⅠ

本セミナーは,次の2点をねらいとして,入学早々の教育学部新1年生176人に必修で行う宿泊研修です。今年度は,平成26年4月12日(土)~4月13日(日)に島根県出雲市にある島根県立青少年の家で行いました。

ねらい:

教育体験活動「1000時間体験学修」の全体像を把握し,大学生活4年間の教育体験活動に対する見通しを持つ。

これからの大学生活を共にする学生同士が交流を深め,円滑な人間関係を築くきっかけとすると共に,島根大学教育学部生としての自覚を高める。

 本セミナーの特徴は,ピア・サポート制度を活用し,先輩である上級生によって研修内容の大半が企画・運営されている点にあります。今年度は,8名の総括スタッフを中心に,38名の上級生が学生スタッフとして参加しました。研修2~5を学生企画として担当し,新入生の目線に立った有意義なセミナーを実施することが出来ました。

【日程】

【開講式】

宍道湖北西岸に位置する小高い丘の上にある島根県立青少年の家に到着し,まずは開講式が行われました。小川教育学部長から,これから宿泊研修を行う新1年生に対して激励の挨拶がありました。そして,本セミナーのねらいについての説明と学生スタッフの紹介がありました。

研修1 1000時間体験学修における教育体験の意義について

川路教育支援センター長から1000時間体験学修における教育体験の意義についての話がありました。その後,基礎体験領域と臨床・カウンセリング体験領域についての説明がありました。誰もが,これから臨む1000時間体験学修についての全体像を把握するために,熱心に聞いていました。

研修2  出会いの場と仲間づくり

学生スタッフのリードにより,様々なレクリエーションをしました。活動する中で,緊張が少しずつほぐれ,笑顔も多く見られました。またゲームを通して自然に協力し合うこともできるようになり,1年生同士の,特に班の仲間との円滑な交友関係を築くことができました。

研修3 基礎体験活動の進め方について

基礎体験活動の魅力や活動の流れを,学生スタッフが実体験をもとにした劇や解説で具体的に説明しました。1年生は,活動の登録の仕方や事前・事後指導のあり方,子どもとふれあうことから得る学び等を楽しく,分かりやすく理解することができました。

研修4 大学生の一般常識とマナーについて

基礎体験活動に参加する上での必要な常識(TPOに合わせた服装など)と社会人としてのマナー(電話のかけ方やメールの送り方)の講習がありました。学生スタッフの劇やクイズを通してグループ別に協議を行いながら学ぶことができました。学生スタッフ作成のマナーブック『マナーレインボーの攻略本』も手渡されました。

研修5 基礎体験活動や大学生活について

クラスごとに5つの研修室に分かれて行いました。最初に,5~6人の班でアイスブレイクを兼ねたグループワークを行い,話しやすい雰囲気を作りました。その後,2年生の学生スタッフ代表が1000時間体験学修や大学生活についての体験を発表しました。自分自身の悩みや失敗も含め,自分の言葉で熱心に語る2年生の話に,1年生が引き込まれる様子がどの研修室でも見られました。その後,1年生からの疑問や心配事に対し,学生スタッフが経験をもとにわかりやすく答えたり,アドバイスをしたりしていました。この活動を通して,1年生は,大学生活への不安が解消され,今後の見通しをもつことができたようでした。

研修6  選択体験活動

 

2日目の午前中は,各グループで宿泊先である島根県立青少年の家の施設プログラムを選んで体験しました。宍道湖でのカッターやサバニ(大型カヌー),施設周辺のオリエンテーリング, グランドゴルフやニュースポーツなどを楽しみました。班単位で活動することで,さらに協調性や仲間意識を培うことができました。

研修7 振り返り

臨床カウンセリング領域の履修に向けてのアンケートを実施した後,基礎体験活動の記録票の書き方を学ぶとともに,本セミナーについて各自で振り返る時間を取りました。セミナーで感じたことを,書く活動を通して振り返ることにより,学んだことや見出した課題について明確にしました。

【閉講式】

川路教育支援センター長,そして学生スタッフ代表から,新入生に向けて挨拶がありました。また,新入生代表より,お世話になった学生スタッフや先生方,施設の職員の皆さんに感謝の言葉が述べられました。
 この2日間,体験しながら学んだことをそれぞれに胸に刻み,お互いが本年度に向けて期待と意欲を高めることができ,無事に修了しました。

≪ 新入生のふりかえり ≫
 
全項目において,肯定的回答5,否定的回答1とした5段階評価で集計し,その割合を円グラフに表しました。

 

○初めは,あまり乗り気ではなかったこの研修も2日間を過ごしてみてすごく実りのある研修になった。前から僕は「1000時間体験学修」を「1000時間ボランティア」と呼んでいた。そのため,「誰かのために何かを1000時間分してあげる」という意識が強かった。しかしこの研修を通して,ぼくの中の意識は,「自分に必要なものを得るために自分から進んで行う」に変わった。特に良かったのは,学生スタッフさんの挫折話を聞けたことだ。いつも良い事ばかりではなく,時には辛いこともある。それを含めて1000時間体験学修であり自分を成長させるための経験ができるものという意識になった。2日間でぼんやりとしていた大学生活が,少し明確な目標をもった大学生活になった。ここから進んで色々な体験をしていきたい。

○先輩方のユーモア溢れる劇や,先生方の講義を通じ,それまでぼんやりとしていた1000時間体験というものをしっかりと理解することができた。「卒業したいから」でなく「卒業した後に活かしたいから」という意識をもつことができた。まだ実践していないので不安もあるが,学生スタッフの方からの貴重なアドバイスも参考に積極的に取り組みたい。

○私は,このセミナーを通して,島根大学の学生になったという自覚,そして教育学部に入り先生を目指すことができる嬉しさを感じた。2年生の学生スタッフさんの話を聞いて最初から人前で自分を出すことや自分の思いを表現できた訳ではなくて,悔しくてもどかしくて涙を流したこともあったのだということを知った。1年間という時間は,こんなにも人を成長させることができるのかと驚きを隠せなかった。何度も何度も丁寧に説明を受けた1000時間体験を理解し始めた時,先輩方の姿を見て,なるほど,何故先生・先輩方が胸を張ってこのカリキュラムが素晴らしいと言うのか,自分から取り組めば取り組むほど価値のあるものになるのかということが分かった。先生という夢を叶える過程で,私もこの島根大学の教育学部のカリキュラムでいろんな体験をし,自分に自信をつけていきたいと思った。

○新たに始まった大学生活は,自分が思っていた以上に大変なスタートで,自分は本当に不安と戸惑いでいっぱいだった。大学での新たな学習に人間関係,数え切れないほど本当にたくさんあった。そんなドタバタしたまま向かえた今回のセミナー。正直「最初の週末くらい休ませてくれよ・・・」と思っていた。でも2日間終えた自分の中には,参加できてよかったと思う充実感しかない。それは,班の仲間と先輩のおかげだ。人に支えられていることを実感したと共に,今後の大学生活の人間関係にも少し余裕がもてる気がする。また,1000時間もこれまでの講義のような説明ばかりで「取り敢えずやるもの」としか捉えることしかできなかったものから,先輩たちの熱心な説明と経験談を聞いて,すごく魅力あるカリキュラムだということが伝わった。この2日間は大学生としての基礎が築けたと思う。ここから4年間で人として大きくなりたいと思う。


 ≪ 学生スタッフのふりかえり ≫
○これまで様々な活動をしてきたが,自分がリーダーになって参加する活動は初めてだった。会議をする時,何を準備するか,見通しを持った話し合いができるかなど,これまでの体験活動で学んできたので,話し合いは最後までうまく進めることができたと思う。特に難しく感じたのは,他の学生スタッフへのサポートである。統括リーダーであるが陰で支える役なので,決して前にはでない。しかし,本番までの準備で少し控えめすぎたため,途中で全員が把握できているのか,気持ちはどうなのか分からなくなった。リーダーとしてのサポートのあり方を今後の課題として取り組んでいきたい。

○全体を通して,1年生にとっても私たち学生スタッフにとっても有意義な活動であった。自分の経験を活かし,伝えたい事を1年生に十分伝えることができたと思う。何も体験していない1年生のモチベーションを上げるのは難しかった。出会って間もない1年生同士のつながりを強める事は重要であり,困難でもあった。1年生の間で他愛もない会話や,自然な笑顔が見られたことがとても嬉しく,やって良かったと心から思った。

○学生スタッフとして活動した。僕は,今までとにかく関わればいい。とにかく考えて動けば上手くいくのだと思って活動し続けていた。しかし,今回の活動で「全力で見守る」という新たな視点を手に入れた。関わりすぎてもいけないのだと思った。一歩引いて班のメンバーを見ていると,「全力で関わる」時には気付かなかったことに多く気付けた。

○初めて学生スタッフとして活動したが,1年生に教育学部のことをよく知って,仲間意識を持ってもらうためにレクの企画をしたり,1年生のサポートをしたりすることができた。また,他のスタッフと一緒に企画運営をしていくことを通して,改めて1000時間体験学修の意義について深く考え,刺激をうけた。今回の活動で,まだまだ自分に足りないものを再認識することができたので,今後の活動ではそれを克服していけるようにしたい。

○ディスカッション班の学生スタッフは,全く関わったことが無い人ばかりで,最初は不安でいっぱいだった。しかし準備会を重ねるごとにみんなでうまく話し合うことができるようになった。2年生が自分の体験を話すことになった時は,私の今までの経験を活かし,話の内容,表現の方法についてしっかりアドバイスできた。当日は,担当したグループの1年生が研修を終えるたびにより仲良くなる様子が見られ嬉しかった。1000時間体験についても1年生と話す中で理解してくれたことが分かったので良かった。

新入生の感想を見ると,入学当初の不安が解消され,これから始まる大学生活への意欲や希望が高まったという感想と共に,生き生きと活動する学生スタッフの姿に刺激を受け,自分もこんな先輩になりたいと憧れの気持ちを持ったという感想も多くありました。また,学生スタッフの振り返りには,自分自身の変容や成長を感じるとともに,今後の課題をしっかりと見つけている内容が多くありました。
 学生参画による入門期セミナーⅠは,新入生にとっても,2,3年生にとっても学びの多い貴重な体験の場となっており,今後も充実した活動にしていきたいと思います。