平成26年度基礎体験交流会

 平成26年度の春季休業に入る2月中旬に,1・2年生全員を対象に必修である「基礎体験交流会」を行いました。島根大学教育学部独自のプログラムである基礎体験活動の成果と課題を各自でふり返り,次年度に向けての意欲や見通しをもつための交流会として,2学年約350人が集まりました。

実施日
平成27年2月16日(月) 12:45~15:00
会場

全   体:大学ホール

グループ:教育学部棟・教養棟 各教室

参加対象
教育学部 1年生・2年生

目的

・基礎体験で取り組んだ今年度の活動実績の確認をするとともに,それらの振り返りを通して自己内省を促す。

・他学年の学生との体験活動の情報交換を通して,自分が体験していない活動で得られる学びの共有化をするとともに,

今後の体験活動への意欲化を図る。

   

1  全体会

(1)趣旨説明・活動時間数の確認
 冒頭で,基礎体験交流会の趣旨を説明し,活動記録票の整理や活動時間の確認を行いました。また,学内資格認定制度についての説明を行いました。
   

 

(2)学年代表による体験発表

1年間の基礎体験活動を振り返る機会として,1・2年生各代表2人の体験発表を行いました。また,その発表についてのコメンテーターとして,3年生代表をピア・サポーターとして迎えて行いました。ここでは,その発表の概要をお知らせします。

基礎体験を通して ~学びとこれから~
人間生活環境教育専攻1年 野坂祐未さん

 地元地域との繋がりを意識し,『やすぎ子ども探検隊』に参加した。しかし,私自身は教えるという立場に固執してしまい,子どもと思うように繋がることができないまま過ごしていた。しかし,ある日,「一緒に遊ぼうよ」と子どもたちに手を引かれ,一緒に遊ぶことを通して共に楽しむことができた。子どもたちに沿う形で接することも必要であると感じた。
 また,自分自身に足りない部分を補完しようと思い,『ことばを育てる親の会』に参加した。子どもたちに対する支援の仕方が分からず当初は身構えてしまった。しかし,時間をかけて接することで次第に子どもたちから話しかけてくれるようになり,最後には折り紙でくす玉の作り方まで教えてくれた。早い段階に自分の足りない部分に気づき,活動を通してより自分の力を伸ばしていきたいと感じた。
 さらに,『学生EMS委員会』では,環境フェスティバルにおいて子どもたちを対象にゲームを行った。様々な年齢の子どもたちとのふれあいを通して,年齢段階に応じたルールや指導方法を考えて行った。子どもたちは以前よりも喜んで参加してくれ,工夫に対する手応えを感じた。現在は落ち葉から腐葉土を作り,松江市内の幼稚園や小学校に配付して活用してもらうなどの企画案も考えている。
 このような基礎体験活動を通して,子どもへの接し方,企画運営の仕方などを事業主や先輩から学ぶこと,子どもの求めているものやその支援方法をこども自身から学ぶこと,活動する上での教材となるものを自然・物から学ぶこと,この3つの学びのサイクルを作って,社会を形成する一人の人間としての力を高めていきたい。そして,学ぶ意欲を持ち続け,自由な発想を大切にしながら次への活動へと生かして引き続き活動することで,新しい視点を獲得していきたい。

                           

 

2年間継続して得た学び ~学生リーダーとして~
言語教育専攻国語コース2年 石川智久さん

 島根県大田市にある国立三瓶青少年交流の家での祭やキャンプ活動に,2年間継続して行ってきた。これは,いずれも私たち学生が一から企画していくものである。1年生当初は,入学して初めての友だちと一緒に主体となって活動することが新鮮で楽しく思うことが多かった。先輩は頼れる,配慮の上手な優しい人たちばかりであった。
 ところが,自分が上回生になったとき,後輩に同じ姿を見せることができるのかと次第に悩み始め,だからこそ2年生になって企画のリーダーを務めた。「去年できなかったこと,失敗したことを今年はやる。自分たちの色を出す」と決意し,これができれば先輩達を超えることができると考えての上であった。
 しかし,40人以上もの人が参加し,初めての参加者もいる中で,多くの人の思いをまとめるのは本当に難しく,そこに自分の思いを載せていく中で多くの失敗やぶつかり合いが起こり,リーダーを辞めたいと思うときもあった。それでも「去年を,先輩を超えたい」という私たち2年生の思いの軸はぶれることがなく,1年生もその思いについてきてくれた。当日は,活動に参加した全員の思いが詰まった,納得のいく企画ができあがった。
 長期間,継続して取り組むことで得られるものがたくさんあった。去年を知っているからこそ今年の課題があり,思いがあり,目標がある。1年生の時には1年生の悩み,2年生の時には2年生の悩みがあり,同じことをしても違う見え方や感じ方がある。これからも,今までにしたからといってその活動を止めるのではなく,別の見え方,感じ方があると信じて挑戦していきたい。
 

 

ピア・サポーターからのアドバイス
言語教育専攻英語コース3年 日下真夕子さん

 二人の発表を聴き,多くの基礎体験活動の様子,そして活動を選ぶ際にそれぞれに願いや考えをもって臨んでいることを知ることができた。そして,様々な活動を通して幅広い視点をもつことができており,教育に携わる者としてのあり方について考えることができていることを感じた。さらに,体験を積み重ねることで自分のキャラクターがつくられていることを発表する姿から感じ取ることができた。
体験活動を繰り返す中で,一つひとつの活動で得られたものが,これから行う活動や実習などにおいて何らかの困難に直面したときに,結びついて生きてくる瞬間があると思う。その成長の瞬間を大切にしてほしい。そのためにも,活動後はしっかり自分について見つめ直す,つまりふり返るということを大切にしてほしい。
これからの基礎体験活動に参加するにあたって,自分で自分はどんな人になりたいのか,そのために何をしなくてはならないのかという目的意識をもって活動を選び,充実した体験を積み重ねていってほしい。

 

 

 

2  情報交換会(グループ別協議)

 1・2年生混合5~6人構成による60グループで,基礎体験活動についての情報交換会を行いました。全体会での二人の発表やピア・サポーターのアドバイスを参考にしながら,誰もが自分の行ってきた活動について紹介したり,その成果と課題をふり返ったり,個別の事例に対してアドバイスをしたりなど,それぞれに熱心な協議の場となりました。

 
【体験による学び】(各グループより提出された協議報告書を参考に,一部ですが紹介します)

・子どもと関わることで,学年・性別・個性など実際の様子を知ることができた。その陰にあるメッセージを読み取っていくことも学んだ。そして,よりよい対応のあり方について,個別だけではなく子どもたち同士をつなぐことも考えることができるようになった。
・子どもにとっての学びは何か,子ども自身が伸びるためにどう支援をするか,その構えや具体的な方策について学べた。
・初対面の人に話しかけようと思っても勇気が出なくて,しばらくは何もできなかった。しかし,活動を続けていくことでコミュニケーションを取ることができた。どのような相手であっても信頼関係を築いていくことの大切さを感じた。
・その地域の特徴やそこに住む人々の思い・願いを感じることができた。一緒に活動をさせていただき,その大変さや喜び,感謝の念をあらためて感じることができた。
・指導者の活動に臨む姿を見ることで,自分に不充分な点やこれから身につけていかなくてはならないことが分かり,さらに意欲をもって臨める。活動の質を上げていきたい。
・自分にとって次に必要な経験は何か,問題意識をもって活動を選択し,取り組みたい。
・専攻の学びを活動に生かすことで,その力をさらに伸ばすことができる。体験を通してさらに専攻の学びを深めることができる。一方で,専攻の枠から離れて多くの先輩や同級生と活動をすることで,学べることが幅広くなることもあった。新規の活動に入っていく勇気が必要であるし,受け入れていくことも大切である。
・人を動かすということを,企画を通して考え,実際に活動することで学ぶことができた。
・様々な困難を乗り越えた時の達成感は,今後の自分にとっての自信となる。

 

 

 

3  基礎体験交流会を終えて 

 

〈1年生〉
◆自分の活動したものは本当に限られているので,違う種類の活動の話を聞くことで,参考になることが多かった。どんな力が必要になってくるか,他の人の意見も聞くことができてありがたかった。                  【言語教育国語コース専攻】
◆前回の1年生だけの協議と違って,2年生の方と一緒に,自分の基礎体験活動についてふり返ることができてよかった。2年生の方から,個別にアドバイスをいただけたので,うれしかったし,とても勉強になった                 【共生社会教育専攻】
◆自分自身をふり返ったとき,1年生として基礎体験活動には「参加するだけ」であった。だから,自分には何の力がついたのか感じることができないことが多かった。2年生からは,これまで以上に多くの活動に参加し,なおかつ「主体的に」活動し,試行錯誤を繰り返して進んで行きたい。                      【初等教育開発専攻】
◆いろいろな人が困っていることを聞くと,いざ自分がその場に居合わせたときのことを想像した。その時,自分はどういう対応ができるのかとか,そういうことを考えるとあまり見当が付かず,同様に困るだろうと思った。そのことについて,同回生や先輩の解決への提案を聞くことができて,積極的に基礎体験活動に取り組もうと思えた。来年度,様々な経験を積んで出直したいと感じた。               【美術教育専攻】
〈2年生〉
◆全体会での代表3人の人の話がよく心にしみました。そんな体験ができるような活動を見つけたいと思いました。【人間生活環境教育】
◆1年生の時にはあんな不安もあったなとなつかしくも感じながら参加した。あの時から様々な子どもと出会って悩み,反省し改善していく中で,応用力・対応力がついてきていると実感できた。                         【音楽教育専攻】
◆後輩と話すことでもっと頑張らなくてはいけないなと強く思った。後輩と関わる機会がそんなにないので,縦のつながりを大切にするには,こういった交流会が必要だと思った。やってみたい活動もあったので,ぜひ参加していきたい。 【健康・スポーツ教育専攻】
◆1年生が今後どういう活動に参加したいのか,どうなりたいのかを明確にしていたので,とても聞きやすく,自分が1年生の頃とはまた異なった悩みがあり,なるほどなあと思った。昨年の先輩方のように,後輩に参考になることがうまく伝えられなかったかもしれないけれど,私が今までに学んできたことが伝わっていたなら嬉しいと思った。自分が昔もっていた苦手をもつ後輩がいて,そのことについて話すことができて良かった 【初等教育開発専攻】

 

4  基礎体験活動に対する有意義感(アンケート集計より)

 基礎体験交流会では活動の成果と課題について語られましたが,それぞれに有意義感をもっているのか,5段階評価で調査しました。その集計結果は次の通りです。

 有意義であると感じている学生は,1年生91%,2年生81%,全体では86%にも上ります。その理由としては「今までできない体験や新しい考え,課題に出会える」「子どもをはじめ,様々な人と出会える」「ねらいをもって活動を選ぶことで必要な力を身につけることができる」などが上げられています。一方で,有意義と感じられない理由としては,「基礎体験活動以外にも有意義な活動がある」「負担に思うときもある」「時間を強制されて行うのはよくない」などが上げられています。
 大学内での学問知と大学外での実践知を往還させることで,より深い学びを得られる-そのような達成感が得られることが大切になってきます。何をねらって活動に参加するのか,実際に行って何が得られたのか,事前・事後指導の機会を通じて意識し,充実した活動の時間になるように支援していきたいと思います。

 

5  まとめ

 この基礎体験交流会は,異学年におけるセミナーで,1年生での参加,2年生での参加と2回あります。1年生にとっては,基礎体験活動を1年間取り組んでみて,成果,喜び,困っていることなどを同級生と共有し,さらに1年多く経験している2年生にも聞いてもらえる機会となりました。一方,2年生にとっては,1年生と話をすることで,1年前の自分を思い出しながらも2年目における自分の今の様子が見え,あらためて成長の手応えを感じたことでしょう。そして,後輩の話を聞きながら今後の自分のあり方について考える刺激を受けたことと思います。
 今回は,「協議をする時間がもう少しほしい」という声が多く出されました。また,「異学年における交流会は今後も継続してほしい」という要望も多く,中には「3年生でも行ってほしい」という方もありました。ご意見を参考にしながら,より多くの学びを得られる交流会となるように努めていきたいと思います。

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