入門期セミナーⅠ

本セミナーは,次の2点をねらいとして,入学早々の教育学部新1年生179人に必修で行う宿泊研修です。今年度は,平成25年4月13日(土)~4月14日(日)に島根県大田市にある国立三瓶青少年交流の家で行いました。 

ねらい:

教育体験活動「1000時間体験学修」の全体像を把握し,大学生活4年間の教育体験活動に対する見通しを持つ。

これからの大学生活を共にする学生同士が交流を深め,苦楽を共に享受しようとする仲間意識を培うと共に,島根大学教育学部生としての自覚を高める。

 本セミナーの特徴は,ピア・サポート制度を活用し,先輩である上回生(学生スタッフ36名)によって研修内容が企画・運営されている点にあります。
本年度の活動の様子を紹介しましょう。 

【日程】

【開講式】

自然豊かな三瓶山のふもとにある国立三瓶青少年交流の家に到着し,まずは開講式が行われました。秋重教育学部長から,これから宿泊研修を行う新1年生に対して激励の挨拶がありました。そして,本セミナーのねらいについての説明と学生スタッフの紹介がありました。

研修1 1000時間体験学修における教育体験の意義について

大谷センター長から1000時間体験学修における教育体験の意義について話がありました。その後,基礎体験領域と臨床・カウンセリング体験領域についての説明がありました。誰もが,これから臨む1000時間体験学修についての全体像を把握するために,熱心に聞いていました。

研修2  基礎体験活動の進め方について

学生スタッフが,実体験をもとにした基礎体験活動の一連の流れを劇にして説明しました。これにより,活動の登録の手続きの仕方や事前・事後指導のあり方,実際の活動における成果と課題などを楽しく,分かりやすく理解することができました。

研修3 基礎体験活動や大学生活について

全体を5人から6人のグループに分け,学生スタッフがまとめ役になり,1000時間体験学修のことや普段の授業のこと,大学生活全般についてなど,質問に率直に答える場を用意しました。先輩の経験をもとに,これから始まる大学生活についての不安を相談し,解消することができました。また,アイスブレイクによって,グループ内の交流の促進も図られ,少しずつ和気藹藹となってきました。

研修4 大学生の一般常識とマナーについて

基礎体験活動を実際に始めるにあたっては,活動先の方とのコミュニケーションが必要となります。その際の電話のかけ方やメール作成についてのマナーや,活動に向けての服装などについて講習がありました。学生スタッフの劇やクイズを通してグループ別に協議を行いながら学ぶことができました。学生スタッフお手製のマナーブック「(マナーを学ぶのは)今で書!」も発刊されました。

研修5 出会いの場と仲間づくり

参加者全員でレクリエーションを行いました。学生スタッフが,ルール説明をユニークで分かりやすいものになるよう趣向を凝らしました。他のスタッフも,みんなで場を盛り上げようとする配慮を行う中で少しずつ緊張もほぐれ,誰とでも楽しく過ごすことができました。“仲間”を実感した1時間となりました。

研修6  選択体験活動

 
 

2日目の午前中は天気にも恵まれ,各グループで宿泊先の青少年交流の家でのプログラムを選んで体験しました。三瓶山の自然に浸るオリエンテーリング, 施設を利用したスナッグゴルフやニュースポーツを楽しみました。自主的にそして協力して活動を運営することで,さらに協調性や仲間意識を培うことができました。

研修7 基礎体験活動記録票の記入

基礎体験活動の記録票の書き方を学ぶとともに,本セミナーについて各自で振り返る時間を取りました。それぞれに活動して感じたことを,改めて書くことを通してふりかえり,各自が学んだことや見出した課題について明確にしました。

【閉講式】

センター長,そして学生スタッフ代表から,新入生に向けて挨拶がありました。また,1年生代表より,お世話になった学生スタッフや先生方,施設の職員の皆さんに感謝の言葉が述べられました。
 この2日間,体験しながら学んだことをそれぞれに胸に刻み,お互いが本年度に向けて期待と意欲を高めることができ,無事に修了しました。

 

≪ 新入生のふりかえり ≫
 
全項目において,肯定的回答5,否定的回答1とした5段階評価で集計し,その割合を円グラフに表しました。記述については文末等について,趣旨を損ねない範囲で変更しています。

○学生同士で交流の輪を広げることも達成でき,レクやグループ活動を通して入学してからしゃべったことのない人とも積極的に意見交換することができ,価値観を高めることができました。これから4年間,お互いに刺激しあって良い関係を築いていきたいです。島根大学に入学してよかったと思えるセミナーでした。
○1000時間体験学修のやり方だけではなく意義も知ることができました。先輩のお話を聞くだけでも感動することもあり,自分も早くいろいろな体験をしてみたいと思いました。学生スタッフを本当に尊敬しました。年齢が1つ2つしか変わらないのに,すごくしっかりしておられ,メリハリがちゃんとついておられることに憧れました。自分も1年後には学生スタッフのような人になれるようにがんばりたいです。そして,たくさんの活動を通して人間として成長し,理想の教師像により近づいていきたいです。
○1週間が経ち,まだまだ友だちも少ない中での泊まりがけの研修は不安もありましたが,積極的に話しかけ,より多くの友達を作ることができました。どれも充実した講義で,特にディスカッションでは気軽に質問できる雰囲気を作ってもらい,分からないことを聞け,共感できたことがよかったです。一番印象に残っているのは劇です。1年生のために心のこもった渾身の演技をしてくださり,面白くそして分かりやすく教えてもらえました。私もあのように人に教えることを上手くできるような人間になりたいと思いました。大学で教育というものを学び,より充実した学生生活を送りたいです。
○教育体験活動に対する不安が少しありましたが,しかし,それ以上にこの2日間で期待と意欲がさらに高まりました。先輩の経験談や講義を通して,早く実習に出て積極的に子どもたちと関わりたいという思いがさらに強くなってきました。教師になるための道程を,実感を伴って確認することができたように思います。加えて宿泊やレクを通して新たな交友関係を築くことができました。人見知りであまり自分から話しかけるのは得意ではありませんが,この2日間で自分から話しかけることの楽しさを感じました。この経験を活かしてこれからの大学生活や実習先において物怖じすることなく自分から挑戦していきたいです。また,島根県の自然の豊かさを感じました。地域に根ざした教師になりたいとも感じました。
 ≪ 学生スタッフのふりかえり ≫
○あこがれのジャケットを着て,あこがれのポジションに立てたことが幸せでした。実際には,たくさん意見がぶつかり合い辛いときもありましたが,その度に力を合わせ,結果的には成功に終わることができました。これまでの体験活動の中で一番時間をかけた活動になりました。一生忘れることはないと思います。
○1年前の入門期セミナーⅠで自分も「学生スタッフを務めてみたい」と思い,その一心で登録しました。1ヶ月間の準備期間において,一生懸命な先輩や同級生とともに活動し,関わる中で,多くのことを学びました。特に,企画の難しさ,スタッフとしての責任を改めて知ることができました。そして,それらを背負って実際に活動を行ったことで,やりがいを感じることができました。ともに頑張ったみんなに感謝しています。
○準備段階ではメンバーと何度も衝突しました。でも,それを乗り切ったおかげで,班のメンバーとはさらに仲良くなり,終わった後の達成感はとても大きなものになりました。1年生からも楽しかったという声が聞けてよかったです。リーダーシップの取り方やマナーについて自分自身振り返って改善できたところもあり,やってよかったと思いました。人間的にも成長でき,自信がつきました。

大学1年生は,家族と離れ1人で知らない地域に住み,まだ友だちも少ない中での生活が始まること,高校と違い学級や担任の先生がいない中で,自分で必要な授業を履修し臨むこと,1000時間体験学修を実施すること…。様々な不安を抱えている中で,スタートします。
そのような状況を理解し,支えてくれる先生や先輩がいて,いつでも相談できること,そして一緒に入学した多くの同級生が仲間としていることを,一泊の生活をともにすることで実感でき,これから始まる大学生活への希望と意欲がさらに高まっていることが分かります。入門期セミナーⅠは,高校生活から大学生活への移行において感じるギャップを解決できる初年次教育のガイダンスとして,とても有効に機能していると言えるでしょう。
また,学生スタッフの2~3年生にとっては,研修内容の企画や実際の運営を任されることで,これまで培ってきた企画力や実行力を発揮できる場となっています。昨年度の1月中旬から組織作りを始め,統括リーダー6人を中心とした36人でこのようなセミナーを開催できたことに,これまでの1000時間体験学修の成果の大きさを感じることができます。そして,今後のそれぞれのさらなる活躍が楽しみにも感じられます。
これから始まる平成25年度が,こうした教育学部生の活躍によって,さらに充実したものになることを確信しています。