発展期セミナー

これまで3年間以上取り組んできた基礎体験領域における活動の学びを,4年生後期が始まるというこの時期に改めてふりかえり,その成果と課題を明らかにしました。 

実施時期 平成24年9月26日(水) 13:00~15:00
会場

教育学部棟35番教室

参加対象 教育学部 4年生以上

 1  趣旨説明と体験時間数の確認

まず,各自で活動時間集計表をもとに,これまでの体験活動時間数の確認を行いました。その後,体験時間数の卒業要件や4年生の体験活動の現状,今後の見通し等について説明を行いました。

 実施状況について,次に示します。

  基礎体験

学校教育

体験

臨床・カウン

セリング体験

合  計
  選択 必修
最終修得時間数 510 400 110 340 150 1000
平     均 680.7 572.9 107.8 345.3 148 1174.0

                                                  (9月17日現在)  

基礎体験領域の選択体験活動は平均して約573時間と必修である400時間を優に超えています。4年間で多くの体験活動に意欲的に取り組んでいることが分かります。
 また,この状況を体験時間別に分類してみました(右図)。卒業の半年前において,すでに必修時間を終えている学生が79%もおり,1000時間以上も取り組んでいる学生が9%いることが分かります。卒業後の自分の進路を踏まえ,残り半期に何をして備えておくとよいのかを考えた上で,今でしかできない体験を計画的に積み上げていくことをアドバイスしました。
 

 

 2  これまでの体験活動で学んだもの

1000時間体験学修は,豊かな体験活動とその省察に裏付けられた確かな実践知を築き,高度の教育実践力を培うことを目的とした独自の必修カリキュラムです。そのカリキュラムを実際に行ってきた4年生だからこそできる,その成果と課題を振り返りながら明らかにしたいと考え,4名の代表者にパネリストになっていただき,ディスカッションを行いました。 

  

●パネリストの紹介

☆大西彩香さん(音楽教育専攻)

 松江市内の小学校に3年間を通じて日々通い,指導に携わる。継続して活動する中で,児童との信頼関係を築き,演奏会を実施するなど成果を挙げている。

 また,専攻生と協同して幼稚園等での行事への取組や,複式学級などの学校現場にも自主的に臨み,教員としての職務も体験してきている。

☆築谷俊助さん(自然環境教育専攻) 

 出雲市内の小学生リーダー養成研究会に3年間所属し,メンバーの学生や先生方と一緒に小学生における生活する力や友達の大切さを教え,意欲的に生き抜くための力を育成している。様々な体験活動を計画的に実践する中で,子どもとのかかわりのあり方やリーダー像を実践しながら,豊かに追求してきている。

☆ 勝部昂介さん(言語教育専攻英語コース)

 様々な青少年教育施設に関わり,地域性を捉えた社会教育のあり方について考えながら,一緒に取り組む学生とともに企画・運営を行っている。
 また,中学校・高等学校での学校教育現場に臨み,専攻で学んだことを生かして積極的授業や授業以外の機会に参加し,生徒たちに英語指導を行っている。

☆絹谷めぐみさん(初等教育開発専攻) 

 小学校・中学校の多種多様な学校現場に積極的に臨んでいる。小規模校や大規模校,複式学級についてなど,あらゆる機会を通じて直接に体験を重ね,学校教育や授業のあり方,その学校に応じた教員の職務について学んでいる。また,教室には入れない児童や生徒への支援なども地道に行い,成果を挙げている。

以上の4名によるパネルディスカッションにより,次の点が指摘されました。

 ●基礎体験活動で学んだこと
①様々な場所での体験活動による,子ども理解・地域理解をふまえた適切な対応力
・学校現場での規模の違いによって,行事一つでもその取組や子どもの関わりが違ってくる。その中での教師の役割のあり方の違いも学べる。
・青少年教育施設においても,その施設の理念や特色,地域の特性によって取組内容が違ってくる。演奏会でも対象や時間によって企画を工夫しなければならない。
継続して行うことで,前回の活動を振り返り生かすことができ,企画力や計画力,活動のバリエーションを増やすことができ,実践力を深めることができる。
・出かけることで,多くの人と関わり,多くの場所を見ることで,幅広い知識や価値観を知ることができ,自分の生き方について考えることができる。野外活動のスキルや安全管理・体調管理も身に付く。

 

②その中でも,特に子どもとの関わりやコミュニケーション能力
・様々な子どもたちと接する中で,多種多様な配慮や支援のあり方について知ることができ,また現場の先生方に具体的なアドバイスをしていただくことができる。
・子どもたちが自ら活動を開始していく上での導入にあたって,意欲を喚起させるパフォーマンス力を身に付けられる。
・特に課題となるしかり方・ほめ方についても,実際に行い,その子どもの反応を知ることで,深く考えることができた。子どもたちは,“こうだ”という指針を求めており,きちんと伝えられる人でありたいと考える。その伝え方も,発達段階や性格に応じた仕方が必要であることに気付くことができる。
・すぐに気付いたことを話すのではなく,子どもに気付かせる,考えさせるといった姿勢で対応することで,子どものよりたくましく育つ姿を見届けることができる。 

③組織としての運営力
・1年生時と4年生時での活動では,同じ活動でも立場が違うことによって行うべき役割の違いが見え,個人での行動から組織での活動まで俯瞰してみることができる。また,自分の経験をもとに,1年生・2年生等に対する理解も示すことができ,その上で自分が何をするべきかを考える力が身に付く。 

●課題

・学校現場を通しての,また授業を通しての責任ある指導を視野に入れ,さらに実践力を積む。
・お節介を直し,もっと子どもの自主性を信じて意図的に放っておく姿勢を培う。
・子どもをほめること,しかることについて,さらなる追求を行っていく。
・自分の専門で行ってきたことの“よさ”を子どもたちにどう伝えるか考えていく。 

 この後,会場全体からも感想や意見が出ました。
基礎体験活動について,その学びに共感する声が多く話され,「学生の数だけ学びがある」,「残りわずかの期間に,まだ一緒に活動したことがない人と一緒に活動したい」,「自分も子どもと関わる上で,何らかの技能を身に付けておきたい」などといった意見が出されました。一方で,「教師力の前に人間力を育成できる活動がよりあるといいのではないか」,「体験学修の運営として,体験活動によって活動の密度が違うこともあるので,改善できるといい」といった提案もありました。

 最後に藤田副センター長からパネリストの一人ひとりの活動についてコメントをいただきました。活動に臨む姿や関わっている子どもの声,身に付けた力の発揮している様子などを通して,パネルディスカッションの振り返りでの成果と課題について確信できました。
 

 

 3  基礎体験領域アンケートより
最後に多くの項目からなるアンケートを記入してもらいました。その結果を一部,紹介します。

Q:基礎体験活動をどのように感じていますか。

81%の学生が本活動を有意義であったとしています。その理由として,
・自分自身の実力や課題を,実際の活動を通じて実感し,その改善に努められるから
・体験活動なしでは,関われなかったであろう多くの人たちに出会い,学ぶことができたから
・自分の専攻以外の世界を知ることができる,生きた社会体験ができる
などが挙がっています。一方で,意義を感じられない,よく分からないという理由としては,
・参加者の意欲や目的意識によるところが大きい。義務的では意義を感じない。
・基礎体験活動以外にも学べる場はある。他にしたいことがある。
・教職に志向していない学生にとっては,義務的に行う感じがある。
などが寄せられました。
 

 Q:あなたの生き方・自己のあり方について,基礎体験活動はどれだけ影響を与えましたか。

 教職志向との関連に限らず,自分の生き方を考える上で,基礎体験活動は何らかの影響を与えたのかどうかを調査したところ,左図の結果となりました。
 影響があった理由としては,
 ・今までに経験したことがない活動をすることができ,幅広く考えることができるようになった。
 ・多くの人と関わることで,コミュニケーション能力が活かせるようになった。リーダーシップの取り方について学んだ。
 ・考えの異なる人との協働のあり方や自分の表現力について考え,実践できた。
 ・自分の長所と短所が,活動を通して見え,その改善を図るよう努められた。
 ・時と場所,役割に応じた対応を行うことができるようになった。
 ・教職を志すかどうか,進路をどうするかを考える上で参考になった。
などが挙げられています。一方で影響がなかった理由としては,
 ・自分の進路上の方針に変わりはなく,活動の影響はない。
が記載されていました。

 活動を通して,ふと振り返ったときに,自分の成長や個性,今後の進路や生き方について,実地に経験しながら考えることができる機会になるようです。事前指導や事後指導において,体験したことを考察する機会を今後も充実させていきたいと考えます。

 4年生の皆さんには,それぞれに多くの学びのあった4年間であったと思います。残り半年を,次への人生のステップとして,悔いのないように過ごして欲しいと思います。 

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