第4回だんだん塾講演会

タイトル:
「聞き手をひきつける話し方について考える」
実施日:
平成22年2月7日(土) 9時~11時30分
場所:
教育学部棟 5F 多目的ホール
参加者:
33名
講師: ①岡山県津山市立高倉小学校教諭 甲本 卓司先生
②紙芝居屋「夢屋」代表 中村 由利江先生
 教育実習や体験活動を通して学生たちが感じることに、人前で話す難しさがあります。その中には、声の強弱や緩急といったスキルもありますし、注目のさせ方、話題提示の仕方などもあります。そこで、第4回だんだん塾では、「話し方のスペシャリスト」として、本学部卒業生で岡山県内小学校に勤務され、TOSSでもご活躍されている甲本卓司先生と、広島県教育委員会「食遊読アドバイザー」で“紙芝居屋のおっちゃん”として全国各地で公演活動をされている中村由利江先生を講師にお招きし、「聞き手をひきつける話し方」というテーマで模擬授業や紙芝居などをしていただきました。
第1部:「5年社会科」講師:甲本先生
 「この1枚の写真から読み取れることを書き出しなさい。」いきなりの発問に戸惑う学生。「その場所から細かい部分も見えるの?見えなければ近づいたっていいんだよ。」
席を離れてはいけないという固定観念がある学生にとっては思わぬ教師の言葉かけ。

 「それでは発表しましょう。」学生が繰り出す答えに対して「もっと見つけてごらん。」という学習意欲をかきたてる短いコメントをつけることにより、学生の集中力は更に増していました。子どもの学ぶ力を鍛えていく技術の実際を体感し、50分があっという間に過ぎました。
第2部:「話し方で大切にしていること」講師:中村先生
 中村先生がこの活動をされるようになった経緯や、自分の生い立ちなどをやさしい語り口調で話されると、そこにいる全ての人が、その世界に入り込みました。相手意識を常に持ち、誰に対しても敬意を表すその姿勢は、話し方というスキル以前に人としての在り方について影響を受けました。特に、集まっている人の中には、もしかしたら障がいがある人もいるかもしれないという配慮の下で、話し始められた時には、今までの自分のいたらなさに恥ずかしくなりました。

 紙芝居を演じられている際にも、視覚や聴覚で楽しむことができるように工夫されたり、双方向でのやりとりを入れて飽きさせないようにされたりしているかと思うと、水を打ったように静かになるほど紙芝居の世界に引きずり込んでしまうなど、まさに魅了されました。
第3部:意見交換 ファシリテーター:錦織修一(国立三瓶青少年交流の家事業推進室長)
 1部、2部の実践から、学生が知りたいこと、教師を目指す学生に今つけさせておかなければならない力、大切にしてほしいことなどを、錦織室長をファシリテーターとして自由に意見交換をしました。「先生のこと好きだな、いいなと思わせるためにはどうすればいいか?」という問いに対して、甲本先生は「笑顔、服装、上品な言葉遣い、出会って1週間以内にクラスの全ての子を具体的なものでほめる」ことを挙げられました。それが、文字になって家の人に伝われば、「今度の先生はいい先生だな」と信頼され、良好な関係を築くことにつながることになるということを補足されると、学生は大きくうなずきました。

 中村先生が聞き手をひきつけるためにふだんから大切にされていることは、相手のニーズを把握し、それに応えることができるスキルを獲得する努力をしていること、読むのではなく引き込むことができるようパフォーマンス力を身につけることと話されました。

 参加した学生は、今回のだんだん塾を通して、聞き手をひきつける話し方は、一朝一夕につくものではなく、日々の積み重ね、努力が必要であることを再確認しました。これを機会に、授業や体験活動、日々の生活の中で常に意識し、実践してほしいと思います。

【学生の感想】

■今回二人から話を聞き、それぞれの実践を見せていただき、私はまた教師というものが楽しみになりました。しかし、そのためにはまだまだ知識もそして努力も足りないと感じました。「本気でなりたい。」そう思うなら、今を本気で過ごし、継続することが大切だと改めて感じました。これからは今まで以上に本気になります。(初等教育開発専攻3年)

■甲本先生の模擬授業では、テンポがよくて、言葉が短いので聞いていて分かりやすかったです。私は幼稚園教諭志望ですが、幼稚園でも応用できることがたくさんあったので勉強になりました。「教師は、教室において最も重要な環境である」という言葉に感動しました。甲本先生が言っておられた7つのポイントを頭に入れて、4月から幼稚園の子どもと接していきたいと思いました。だんだん塾の後、本屋に行って本を買いました。毎日読んでいます。これからも毎日読み続けて行きたいと思います。(人間生活環境専攻4年)

■今回この講義を受けて感じたのは、甲本さんも中村さんも表情が豊かで、声のメリハリがあるという共通点があることです。お二人は生き方や生きてきた道は異なりますが、聞き手を引きつけるには「笑顔」が重要であるとおっしゃっていました。つまり私たちがこの先どんな道へ進もうとも笑顔でいること、笑顔で人と接することが大切だというメッセージだと思います。私は自分のモットーは「常に笑顔でいること」と決めているので、今回の講義を受けて、その考えは恥ずかしいことではなく、むしろ、これからも続けていくべきだと励まされました。
  また、学校で初対面の人と接する時に「(下の)名前)を覚える」ことが重要だとおっしゃっていたのも印象的でした。たしかに私も小学生の時に先生が入学してすぐに下の名前で呼んでくださり、嬉しかった記憶が今でも残っています。名前を覚えるという行為がその子どもや人々に対しての興味・関心の表れであり、より親しくなるための大きな一歩だということを示しているのだと思いました。
  まだまだ社会人になるものとして、一人の人間として至らないことばかりですが、色々な話を聞き、色々なことを経験していく中で成長し、「これだけは誰にも負けない自分だけのもの」を探し、得ることができるように努めていきたいです。(言語教育専攻2年)