公開日 2024年07月31日
第24回 教育学部・教育学研究科アカデミックカフェを開催しました
- 発表者: 松尾奈美 先生(教職大学院・教師教育研究センター)
- 日時: 令和6年7月24日(水)17:00~18:00
- 方法: 対面
- 場所: 教育学部212研修室
- 題目: 認知科学・神経心理学から考える子どもの学び―A.R.ルリアのロマンチック・サイエンスから、認知特性、そして探究学習まで―
今回は、教育方法学が専門の松尾奈美先生にお話しいただきました。松尾先生は、学校で授業を見学した際に抱いた「新しいことを学ぶとき、子どもの頭の中で何が起こっているのか?」「教える人が考えるカリキュラムと学ぶ人に最適なカリキュラムは同じか?」という疑問から、子どもの認知特性を捉えて学習支援につなげる研究へと発展していったと語りました。
まず、「知能のPASS理論」に触れ、人が新しい情報を認知して処理するプロセスを説明されました。この理論は、ソビエト連邦の心理学者A.R.ルリアがMRIのない時代に脳と心の関係を研究した成果を基にしており、ルリアの脳モデルから生まれた認知検査やその活用法について紹介されました。
さらに、ルリアの研究の流れをL.S.ヴィゴツキーやO.サックスといった他の心理学者や医師と関連付けながら紹介し、認知検査で通常・健常とのズレを個性と捉えることが障害理解や人間理解の一つのあり方ではないかと述べました。
最後に話題提供として、近年の脳に関わる様々な書籍を紹介し、脳と心、思考と判断といった関心事について語りました。「白黒思考」や「判断疲れ」といったキーワードを挙げながら、「教育現場で教員がどのように子どもに伴走するのか」聴衆に問いかけるように述べました。
松尾先生は、他分野の研究者にも理解しやすいように説明し、教育学部において共有すべき情報や考える視点、課題が数多く提示されました。