応用期セミナー2011

(実習セメスター学外体験活動と学校教育実習Ⅳ・Ⅴの振り返り)

実施日時  平成23年12月2日(金) 12:45~15:45
参加対象  教育学部 3年生
会 場    教育学部35番教室 → 分科会各会場

 3年生(学校教育実習Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ履修者)を対象とした応用期セミナーのねらいは次の二点でした。
① 実習セメスターにおける体験活動の実際をふまえ,一人ひとりがこれまでの体験時間を確認し,基礎体験活動に対する成果と課題を明らかにする。

② 実習セメスター及び教育実習での活動を振り返り,今後の大学生活を展望すると共に,進路決定に向けての自己啓発を促す。

今回のセミナーの特色は,全体会で学生代表による体験発表を行った後に,上記ねらい②を具現化するため,今後の志望進路別グループ協議を行ったことです

 極めて厳しい状況下にある就職戦線で,できるだけ学生のニーズに対応したセミナーとなるよう,工夫しました。以下その概要を紹介します。

 


 

(1)体験発表
5名の学生代表が,学校教育実習とセメスター学外体験の発表を行いました。

≪発表1≫ 人間生活環境教育専攻   澤田 ゆうかさん
「松江市立城北幼稚園での教育実習を通して」

 「おもしろい音を見つけよう」という保育を実践した。保育案を実際に作って臨む機会は今回が初めてであった。自然物等の身の回りにあるものを組み合わせて音をつくる活動である。教師の立場で,保育を前に進めなければ!という意識が先行して,子どもたちの活動を丹念に見ることができていなかった。活動を広げるような教師のはたらきかけ,子どもたちのよさを認め励まし意欲づける言葉がけが大切であることを痛感した。
  指導していただく先生から,教師の支援のあり方について大変貴重なアドバイスをいただいた。

≪発表2≫ 初等教育開発専攻  長谷川 啓太さん
「松江市立母衣小学校及び海士町立福井小学校での活動を通して」

 附属小学校での教育実習経験や日頃行っている基礎体験活動と公立学校での体験を照らし合わせることで,自分に何が必要なのかを見つけるよう努力した。
  また,一度隠岐へ行ってみたかったので,大学生のうちに実現できた意義は大きいと感じている。松江市内の風土や人,自分の育ってきた地域との違いを感じ,教育方法の可能性は大きく広がっていると感じた。
  今後も自分の考えている枠にとらわれず,新しいものにできるだけ触れ,経験していきたいと考えている。

≪発表3≫ 共生社会教育専攻  荒木 千夏さん
「自分の母校である八橋小学校での体験を通して学んだこと」

 21日間205時間にもわたる「母校実習」を通して,小規模校における先生方の巧みな学級づくりを目の当たりにした。様々な学校行事にも積極的に参加させてもらい,現場の先生方の「ノリ」に負けないよう,学生らしくしっかりパフォーマンスを発揮できた。
  八橋小は職員室の雰囲気がものすごく良く,様々な子どもたちへの支援も全校体制で取り組まれている。教師のチームワークと,子どもを本気にさせるテクニックを,これからの自分に生かしていきたい。

≪発表4≫ 初等教育開発専攻  長尾 沙織さん
「中央小学校で学んだ『さぐって見つける』こと」

 特別な支援が必要な児童,とりわけ情緒障がいについて,どう対応すべきか悩んだ。何かの活動に誘おうとしても「嫌い!」と言って逃げたりたたいたり,きつい言葉を返してきたりする。 そこで,自信をつける,褒める,見通しをもたせるという三つのことを繰り返し,そこから子どものよさをさぐって見つけようと努力した。
  対象児童は,一つのことに集中できにくい,やり方がわからなくてできない,きちんと理解するとできるといった特徴がつかめてきた。失敗の積み重ねがあったからこそ,支援の糸口が見つかったといえる。こうした構えをこれからもずっと持ち続ける教師でありたいと考えている。

≪発表5≫ 特別支援教育専攻  清川 由衣さん
「島根県立松江ろう学校寄宿舎で学んだこと」

 最初は話しかけられても戸惑うばかりだった。何をどうすればよいかわからなかったが,担当の子どもと一緒に歩いているうちに,二人だけに通じる会話があることを見つけた。それは表情やジェスチャーでわかることなのだ。
  教えてあげようとするのではなく,手話を通して子どもに気づかせようと努力することによって,伝えようとすることが素直に相手に届くし,自分も受け止めることができるようになっていった。
  コミュニケーションの手段は豊かであり,さらに多様でなければならないと痛感した。

(2)志望進路別グループ協議

 今回のセミナーは,①強く教職を志向する ②教職かそれ以外の進路で迷っている ③教職以外で就職活動を展開する ④大学院進学をめざしている 以上4つの志望進路別にグループを編制し,ひとつの小グループが3~5人で構成されるようにしました。特に①群では,志望校種と都道府県が同じになるよう配慮しました。

① 強く教職を志向する学生群の様子
 もともと強い教職志向のあった学生たちが,実習を経てさらに何をどう高めていけばよいか,活発な議論が行われました。

友だちの考えを知るよさ (人間生活環境専攻学生)

学生代表の発表にとても刺激を受け,自分も何か発信できる人間になりたいと思った。何を伝えたいのか,何か伝えられることはあるのか,今後自分はどうあるべきなのか考えていきたい。

 グループ協議で司会をさせてもらったが,もっとみんなの考えや意見を引き出す方法があったのではないか思った。もっと聞いて,もっと話して,もっとみんなの考えを知って,自分の中の視点を増やしたり考えを深めたりしていきたいと強く感じた。こうした協議やディスカッションは,セミナーのような形で行うのではなく,授業の中に取り入れていくべきだとあらためて感じた。

活動への構えを変える (初等教育開発専攻学生)
  他の人のセメスターでの学びを知り,自分自身の体験活動に対する姿勢の甘さを痛感した。週二回幼稚園に通い,毎日記録をとっているにもかかわらず,自分ができなかったことに今後どう対処していくか,深い部分にまで踏み込めていないことに気づいた。いくら現場で体験活動を行っても,「ただやって終わり」では何も残らない。自分がナマの子どもと向き合える貴重な時間を無駄にしないためにも,一回一回の活動を大切にして毎回何か課題を見出し,次回チャレンジするという姿勢をもつことが大切だと感じた。“子どもと楽しく遊ぼう”だけでなく,一人ひとりの子の特徴や傾向も観察しながら,体験活動の質を高めていけるようにしたい。

② 教職かそれ以外で迷っている学生群の様子
 ここでは,教職に向かう気はあるが,迷いが生じている学生が集まりました。実習で考えたことや得たことをもとに,今何をどう悩んでいるのか,なぜ迷っているかについて,互いの思いを共有していきました。

言いたいことが言えた安堵感 (言語教育専攻学生)

 グループ協議では,進路に対する不安を共有でき,少し気持ちが楽になった。

教員をめざすべきか迷っている人たちが集まって,様々なことを話し合うことができた。迷っているが故に,教育実習中の困った出来事を分析して互いに共有できたのはよかった。
  友だち同士での普段の会話では,自分の考えている教員への志望理由や具体的な進路を言うことには抵抗があった。しかし,今回は同じような悩みを抱えている人たちのグループだったので,思ったことを言うことができた。友だちの成果や課題を聞いたりアドバイスをもらったりすることによって,実習日誌でふりかえったこととは逆の角度からあらためて実習をふりかえることができた。

何に悩んでいるかがわかった (音楽教育専攻学生)

  今日一番よかったのは,進路を悩んでいる人同士で話をすることができたことだ。自分と似たような思いを話してくれた人がいて,自分の中で悩んでいることをはっきりさせてもらった。
  私は今までずっと学校が好きで子どもが好きだったので,そうであれば教師かな…というように教職へ進むにあたって明確な理由をもつことができずにいた。しかし,教師以外の選択肢もない状態であることが悩みの原因だった。
  話し合いの中で,教育学部で学んだことを活かせる仕事は教職以外にも絶対あると言ってもらい,自分の選択肢を探そうとしていなかったのだと気づいた。これまで自分の中のモヤモヤを他人にきちんと話したことがなかったので,気持ちが随分軽くなった。まずは時間をつくって職業を調べ,自分のこれまでをふりかえり,今後どうするべきなのかを考えたい。

③ 就職活動を今後展開していく予定の学生群の様子

 ここでは,全学のキャリアセンター及び学部の就職支援室の協力を得て,今後就職活動を展開して行くにあたって何が必要か,どういう見通しをもてばよいかについて認識を深めるとともに,仲間の思いを共有していきました。

自分から行動を起こすきっかけに (言語教育専攻学生)

 教職志望ではない,もしくは迷っているという人同士で,共感できる点や悩みなどを共有することができ,有意義な時間であった。教育学部に入ったから教職に就かなければならないというプレッシャーがある。これからの人生を考えていく上で,自分はどういった人生を歩んでいきたいのかを真剣に考えている様子が,発表や協議を通して互いに伝わってきた。
  同じような境遇にいる人々と,こうした機会をもてたことは貴重であった。今回は大学側から与えてもらった機会を,今後は自分から,必要とする情報や機会を捉えていくように,自らを鼓舞していかないといけないと思った。

④ 大学院進学をめざしている学生群の様子

もっと時間が欲しかった! (共生社会教育専攻学生)

 私は大学院進学コースのグループで協議した。この志望は人数が少ないので,周りが教採や就活ムードで焦りやブレが生まれているといった悩みがよく聞かれた。こうした悩みとともに,自分を励ます考え方などを聞き,大変参考になった。
  協議の時間がセミナー全体の半分だったが,もっと多くてもよい。なぜなら,進路をどのように考えているかによって,教育実習や体験活動から得られるものも変わると考えるからだ。なるべく近しい考え方や進路の人同士で話し合う方が議論は深まると思う。体験発表は,プリントや小冊子の形式にしてはどうか。配布物にしてもらうと,自分の興味関心に応じてじっくり見ることができてよい。

(3)まとめ 

 異口同音に出たのが,「自分と同じことで悩んでいる人がいて安心した」という率直な感想です。互いの進路については,学生間で話題になっていない(あえて話題にしない)という意外な事実が浮き彫りになりました。そういう意味でも,今回のセミナーは学生にとって,今後の見通しをもつという一定の役割を果たしたものと考えています。
  いよいよ実社会へ踏み出す前の「武者震い」を感じさせる感想(抜粋)を紹介します。自己を厳しく見つめる目が印象的です。また,セメスターに参加しなかった学生からは,「やはり参加すべきだったか…」という声も少なからず聞かれました。
  応用期セミナーへの積極的な要望も聞かれ,大変参考になりました。次年度以降に生かしていきます。

重荷が軽くなったかも…  (言語教育専攻学生)

 自分の行動に具体性がないと感じた。ぼんやりとしたビジョンや目標はあっても,具体的構想がなく要領を得ないことが多くある。これを克服するために必ず具体目標を持って臨むようにしたい。
  自分はコミュニケーション能力が低いという固定観念があるようだが,グループ協議の中で,コミュニケーションにも様々なやり方があるという話を通して,少し自分の中の重荷がとれたような気がした。時間がなくてみんなの話を十分聞けなかったが,とても有意義な時間だった。

少しは気持ちが楽になった  (心理・臨床専攻学生)

 実習セメスター体験には参加しなかったが,参加学生代表のスピーチを聞きながら,皆とても生き生きと話していた。話したい,伝えたいことがたくさんあって,うまく短くまとめられないもどかしさを表情に出す人もいて,実習セメスターは有意義な活動の場であったのだとあらためて感じた。「さぐって見つける」という言葉はとても印象に残った。これは学校現場だけに当てはまるものではなく,今の自分に相応しい言葉だと思った。今後の進路を考える上で必要である。

距離を空けられているぞ…  (健康スポーツ専攻学生)

 代表者が発表を行った時,同学年であるのに大人びて見えた。話す内容や話し方など,普段友だちと接している時と大きな違いがあった。自分もこれぐらい成長できているのだろうかと不安を感じた。もっと課題意識をもって,様々なことを考えて生活し,体験に臨みたい。
  グループ協議で将来について話し合った際,各々の具体的な計画を聞きながら,自分は周囲から少し「置いて行かれている」という危機感,焦燥感に駆られた。高校教師という未来像が漠然としているので,もっと真剣に考えないといけない。