基礎体験交流会(1・2年生対象の体験発表と情報交換会)

 実施日時:

平成22年2月22日(月) 12:45~16:30

 会 場:
全体会→大学ホール  情報交換会→教養棟各教室
1 活動時間数の確認・趣旨説明 

会の冒頭,交流会の趣旨を確認し,活動記録票の整理や活動時間の確認を行いました。
2 学年代表による実践発表
 1・2年生それぞれから代表2名が,自分の体験活動の実践発表を行いました。一年間の基礎体験活動を振り返り,その意義についてもう一度考える機会となりました。
 今回は国立三瓶青少年交流の家で学んだことについてお話しします。大きく三つのキーワードにしてみました。
社会教育施設の活動で学んだこと
1年 数理基礎専攻 H・K

  第一点は「ボランティアを楽しむ」ことです。4月に参加したセミナーで,講師の方から「自分が楽しまないで相手の為になるようなことができるわけない。楽しみがないと続かない。見返りがないといけない」というようなことを言われて,それまで自分が思っていたこととかなり違って驚きました。それ以来,楽しむということを念頭に置いて取り組んでいます。

  第二点は先輩の姿から学ぶ姿勢です。先輩たちと話していて一番驚くのは,先輩たちの質問力です。聞く力,的確に判断できる力が先輩たちはとても優れています。そういう先輩からのアドバイスはとても参考になります。

  第三点は「助け合う」ということ。企画を進めていくと様々な問題場面に出会いますが,その都度互いに気遣いながら協力的な雰囲気をつくることを大切にしています。途中から参加する仲間に対する配慮もとても大切なことだと考えています。
  最後に,以前と比べた自分自身の変化なのですが,企画力をアップさせていく時に必須な力についてです。普段から見聞することに対してのアンテナが鋭くなり,「あ,これ三瓶の活動で使えそうだぞ」というような視点で物事を見るようになってきました。このことは,教職にも欠かせない「教材研究の力」にもつながっていると思います。
  来年度は「地域」フィールドからさらに,子ども体験や学校体験へと広げていこうと考えています。
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 私は夏休みから松江養護学校の学童クラブで体験を進めてきました。私の専攻である特別支援教育について,この活動を通して障害のある子どもたちへの理解を深めていきたいと思い,取り組み始めました。
  私がこの活動で学んだことは3つあります。
松江養護学校学童クラブの子どもたち
1年 特別支援教育専攻 Y・M

  第一点は子どもたち一人ひとりの接し方の違いです。一人ひとりに合った接し方をするために,私はまず積極的に子どもたちと関わりをもつようにし,子どもたちの障害の特性や性格を把握していきました。そして,指導員さんの子どもたちとの接し方をしっかり見て学び,分からないことがあったらすぐに聞くように心がけました。

  第二点は,障害のある子どもとのコミュニケーションの取り方です。
  子どもたちの中には,自分の思っていることを口でうまく伝えることができない子もいます。そういう子どもの身振りや表情など言葉以外の表現・サインを,最初,見つけることがとても難しく,何度も戸惑いました。しかし,回を重ねていくごとに,「この行動は前にも見たな」,「こんなとき指導員さんはこうしていたな」というのが分かってくるようになり,対処の仕方も分かるようになりました。そのおかげで,自信を持って子どもたちと接していき,距離を縮めていくことができました。

  第三点は責任についてです。学童クラブでは,子どもと一対一になって対応するので,急に休んだりすると,多くの人に迷惑がかかってしまいます。自分の予定をきちんと管理して,把握しておくことが大切です。子どもへの目を配り,声かけも大事です。様々な場面で,常に責任感を持って活動に望むよう心がけています。

  今後の課題としては,子どもの伝えたいことを的確に理解すること,そして,子どもがしてはいけないことをしてしまった時の注意のしかたです。
  私は学童クラブの他にも多くの基礎体験活動に参加しました。そのすべてが充実した,意味のある活動となりました。実際にやってみて初めて活動の楽しさや,自分の課題について気づくことができるので,皆さんも少しでも興味がわいたら是非参加してほしいと思います。
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 私が体験学習に取り組み始めたきっかけは,友人の誘いでした。ある小学校のオリエンテーリング行事を手伝う仕事でした。この活動で私は,様々な場面や状況の中で適切に身を処していくことの難しさを痛感し,「もっと社会性を身につけないといけない」という思いから,体験学修に積極的になりました。
  三瓶青少年交流の家では,10月の「さんべ祭」と2月の「ミニ冬祭り」が大きな行事です。この二つのイベントを通して,学生の企画力は鍛えられます。

社会性を身につける基礎体験
2年 英語教育専攻 A・Y


  昨年参加した中で,私はいきなり「班長」を務めることになりました。「何もできない」では済まされません。しかし,なかなか自分の考えを協議の中で出すことができない自分がそこにいました。みんなについて行けるように必死に企画を考え,自分の考えを出そうと努力しました。「それぞれの立場はあるけど,みんなでつくっていこう」と仲間がみんなに声をかけ,一人で抱え込まず,みんなで支え合って企画を形にしていきました。こういう集団の中で培われる「メンバーシップ」と「リーダーシップ」を,先輩たちの姿を通して学ぶことができました。

  三瓶の活動を通して,私が皆さんにお勧めしたいことは,自分だけのノートをつくって活動を記録していくことです。活動をやりっ放しにしていてはもったいないです。記憶を記録にとどめ,自分自身の糧としていくのです。それには,自分のライバルの存在も欠かせません。一緒に活動する仲間も大事にしましょう。
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 二年間続けてきた「湖北中学校サタデースクール」の取り組みを通して,自己反省を含めて問題提起をしたいと思います。

  湖北中サタデースクールは受験生を対象とし,土曜の午前中に数学と英語を1時間ずつ,自主学習という形で勉強するものです。学生スタッフは10名程度の生徒からなる班を担当し,生徒から出る質問に答えたり,巡回して声を掛けたりすることが主な活動でした。
  私が1回生で参加した昨年度は,黙々と勉強する生徒の姿が印象的でした。活動中や事後指導では生徒にどう教えるか,学習面での気付きをどう与えるかといった指導方法の面を考える機会を多く得ることができました。

  2回生で参加した今年度は初回から生徒の私語や雑談が多く,なかなか学習に取り組めない姿がよく見られました。昨年度と違い,まず学習環境をどう整えるかといったことに考えを向けることが多かったように思います。今年度の事後指導ではそのような様子も相まって,先生から「今後の望ましいサタデースクールのあり方は?」と問われました。それに対し,「学生側のコミュニケーション力を高めなければ」,「生徒と勉強だけでなく色々な話をすることでより親密な関係をこちらから築くことが重要では」といった意見でまとまりました。

体験学修で必要な視座は何か
2年 心理・臨床専攻 Y・O



  ここで私は1つの問題提起をしたいと思います。「コミュニケーション」という言葉でまとめることで見失っている部分があるのではないか,ということです。「コミュニケーション」という言葉に代表される視点は対人関係に目を向けることができるものの,事業全体のシステムや目的の見直しといった議論の余地をバッサリと切り捨ててしまいます。そのような意見が「望ましいサタデースクールのあり方」として集中してしまい,大枠である事業のシステムや目的に言及できないことに,私は苦々しさを感じていました。

  サタデースクールを「コミュニケーション」以外の視点から考えてみた場合,例えば自主学習を念頭に置きつつ,黙々と勉強するよりも互いに教えあいながら時間を過ごすことを目的にする,ということもありうるでしょう。普段の学校とも家での自主学習とも少し違った形態で勉強するといったことは,十分求められてよい可能性であると考えます。そしてこのような目的は学生スタッフと生徒の「コミュニケーション」のあり方を少なからず変えるように思われます。このような視点は単に「コミュニケーション」を焦点に据えるだけでは得られないものです。

  最初に述べたように,この発表は自戒を込めて話しています。今までの基礎体験で私は「自分にはコミュニケーション力がもっと必要」といったことを簡単に,何度となく思ってきました。そのことで見えてこなかった部分が大いにあるように思います。
  私はこれからの基礎体験活動において,今回のように複数の視点から体験活動に臨みたいと思っています。
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<学内資格認定者からのアドバイス>
  私たち教育支援センターの学内資格である「体験学修ピア・サポーター」と「学校教育サポーター」それぞれの有資格者から,1・2年生にメッセージを送ってもらいました。

体験学修ピア・サポーターのK・Iさん

学校教育サポーターのM・Mさん
 二人の話の概要は,自分が残してきた足跡について,さらに有資格者として後輩たちをどのように支えていくかということについて,1・2年生一人ひとりの心に届くようなメッセージでした。
・自分の思いを強くもって活動に取り組んでいくこと。
・相手の気持ちになって,しっかりと傾聴するよう心がけること。とりわけ,少数派の意見を大事にすること。
・体験活動を自ら楽しむこと。
・体験を続けること(繰り返しでも良い)二回目は一回目よりも必ず良くなる。
・学校を含めた,子ども,地域の三領域をバランス良く体験すること。
・活動を記録に残すこと(ノートをつくると良い)
  「活動で得た学びを自分の糧にしていって欲しい」ということを核としながら,温かく心のこもったメッセージに,これから学部を支えていく2・3年生としてしっかりうなずきながら耳を傾けていました。

<支援センター専任教員の評価コメント>
  全体会を総括し,附属教育支援センターの専任教員が,発表者に対してコメントしました。

 このような場に立って,自分の体験をふりかえり,そのエッセンスをみんなに伝えるということはとても大切で意義深いことです。発表者一人ひとりから,体験への熱い思いが伝わってきました。
  発表した皆さんのキーワードを集約すると「継続は力なり」ということ。そして「人間関係力」をしっかり鍛えていくこと。これらがクローズアップされましたね。

  でもそれだけを身につければ「教師」になれますか。もっともっと自分の専攻・専門性を生かした教科指導力を磨かねばなりません。学部での専門教育と1000時間体験学修での学びが融合して初めて,皆さんは力を持った教師となっていくのです。
  どうか,はじめの一歩を踏み出すきっかけをつかみ,力強く自己変容していってください。期待しています。

3 グループ別協議(情報交換会)

 1・2年合わせて10~12名で構成するグループ(1年時の学校教育実践研究Ⅰのグループ)で,基礎体験領域についてのディスカッションを行いました。基本の班がAからEまであり,その中に各6班ずつあります。総30班に分かれて,2年生代表の司会のもとで,活発な情報交換,意見交換が行われました。

【グループ協議で話題となったこと】
・何を基準にして基礎体験を選択しているか。
  →副専攻の力を伸ばす体験,自分の得意な力を伸ばす体験,逆に苦手を克服する体験,  さらには3年生時の教育実習に向けて,指導力を伸ばしたいという意図など。
・「はじめの一歩」を踏み出せないでいる人が結構いることがわかった。まずは友だち同 士で誘い合って,一歩を踏み出してみる気持ち(きっかけ)が大切である。
・最初から「いい体験」はそうない。何らかのきっかけで「やりがいのある体験」になる ことだってある。じっくり取り組んでいきたい。
・受け入れ先では,大人の人と関わることが多い。そういう中で少しずつ社会人としての 自覚が持てるようになり,言葉遣いや挨拶,礼儀等に特に気を遣うようになってきた。
・子どもと関わる活動の中で,「叱る」と「怒る」の違いをきちんとしたい。
・ただ単に活動して時間を満たすのではなく,その中で自分が身につけたい「力」を自覚し て取り組むことが大切だと気づいた。
・仕事を言われないと動けない自分が情けない。自分で自分に「喝」を入れないといけない。

4 体験学修「活動相談会」

 今回の交流会では,新たな取り組みとして,交流会の最後にオプションで,活動相談会を設定しました。これは,体験時間の絶対量の少ない学生と今後さらに有意な活動を模索している学生を対象として開催することにしたものです。
  来年度から,3年生時の教育実習の履修資格ハードルが今までよりも若干高くなることから,2年生で基礎選択120時間未満者,1年生で基礎選択60時間未満者をそれぞれに集め,支援センター専任教員から,今後の学修への取り組みや見通しについてアドバイスを行いました。