第2回だんだん塾講演会

【国際理解 講演会】

 

グローバル化が進み,諸外国の人たちと交流する機会も珍しくなくなりました。しかし,国際理解への努力の不足により,トラブル等が起こる場合もあります。そんなカルチャーショックを,実際に日本に来て体験した方からお聞きすることで,自分ちが住んでいる日本,そして島根を見つめ直す機会をもちたいと考え,本学部附属学校園ALTとして勤務していらっしゃる片寄メーガン先生(通称“メグ先生”)にお話をお聞きししました。 

実施日:

平成25年11月20日 14:30~16:00

場所:
教育学部棟多目的ホール(517)
参加者:
教育学部学生22名 教職員6名
講師: 片寄 メーガン氏(附属学校園Assistant Language Teacher)

 当日の講演の内容について,簡単に紹介します。 

演題:「日本に住んで 島根で勤めて Casual thoughts about Japan by a Canadian woman」

講演の概要と様子:
●ご自身の生まれ育ったカナダならびにご自身の経歴
 ・高等学校までは義務教育。大学進学では入試はなく,小学校から高等学校までの成績を総合して決める。
 ・雪が多く,1ヶ月間学校が休みになったこともある。
 ・英語と仏語を幼児期から学ぶ。両国語が公用語である。
 ・大学では,さらにイタリア語,ドイツ語,ロシア語を学んだ。4年目に日本語を学び,その関係で日本から来た留学生と英語を教えながらふれ合う機会があった。
とてもやさしくて,いつか日本に行きたいと思うようになり,JETプログラム事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)に参加し,AETとして日本に来ることができた。
●日本に来て感じたこと
 ・東京に着いて,暑い,人が多い,ビルが高いと感じた。道が分からないときに尋ねたら,教えるだけでなく,一緒に来てくれた。日本人はほんとうにやさしいと感じた。
 ・島根県松江市玉湯町に着て,東京とは違う風景を感じた。でも暑いことには変わりなかった。
 ・温泉地なので,地域の方に連れて行っていてもらったが,水着を着用しないのにびっくりした。そこで,お湯に入って話をするという文化に驚いた。
 ・料理も大変で,まずは作り方を知ることで苦労した。自分の国の料理も食べたいと感じることもある。
●AETとして勤めて
・子どもたちと英語学習を通じてコミュニケーションが取れるひとときがとてもうれしい。
・授業中の役割では,現場では先生方が忙しく,なかなか打合せができない時があるのが残念である。英語の発声の見本ばかりではなく,もっと多くの役割ができると考えている。何もせずに終わってしまうときもあるので,もったいないと感じるときもあった。
・言葉だけでなく,異文化に対する理解や楽しさを伝えていきたいと考える。

 

    この後,学生の方から質問が出されました。例えば,「カナダでぜひ訪れておきたい所」「日本とカナダの幼児教育や初等教育のあり方の違い」「どうして多くの言語を習得できるのか」「留学にあたって必要な心構え」など,授業中では聞くことができない,あらゆる観点から質問がありましたが,丁寧に一つひとつ答えていただき,充実したコミュニケーションの場となりました。

 

  

聴講した学生たちは,各自でふりかえりを行っています。そのごく一部を紹介します。 

カナダと日本では文化がまったく違い,住むとなれば自国とのギャップで多くの苦労をするのだと思いましたが,その分新鮮さもあり,楽しい面もあると感じました。「毎日が驚きの連続」という言葉が印象に残っています。私は外国に大学生のうちに行ってみたいと思っているので,今回教えていただいたことを忘れず,行動に移していきたいです。

メーガン先生の小学校時代の話で,1日のうち半分は英語で過ごし,もう半分はフランス語で過ごしていたという話を聴いたとき,私は「なんて大変なんだろう」と思いました。しかし,先生はそれが全く苦にならなかった,楽しかったとおっしゃっていました。私は何かを学ぼうとしたり身に付けようとしたりした時に,そのことに対して“楽しい”と思ったことがほとんどありません。いつの間にか学ぶことは苦しいことと無意識のうちに思うようになってしまいました。その結果,多くの事はあまり身につかず,新しい事に挑戦するのにも億劫になってしまっていました。先生のお話を聴いて,学ぶ事は本来楽しい事であって,そうして学んだからこそカナダの子どもたちは両方とも話せるようになるのだな,ということに気づく事ができました。私は英語の授業が苦しかった記憶しかありません。これでは身につかないはずです。これから何かを学ぼうとする時には,どうしたらそれを楽しく学ぶ事ができるのか,考えようと思いました。

講演を聴いて,小学校外国語活動におけるALTの役割について考えることができました。ALTの先生と協力することの大切さを感じ,自分自身も授業をする際には,ALTの先生とコミュニケーションを取っていきたいと思います。そして,子どもたちに,英語が上手に話すことができなくても,心を通い合わせることはできるのだよ,ということを肌で感じさせてあげたいです(ジェスチャーや表情などを使うこと)。また,積極的にALTの先生の出身国のことを授業に使わせていただき,国際理解につなげたいです。

 

メグ先生が講義の中で「自分の仕事が何なのか分からないときがある」と話していました。この疑問や悩みはメグ先生に限らず多くのALTが感じている事ではないかと思いました。教師はALTの役割,担ってほしい姿などを考えながらともに授業をつくっていかなくてはなりません。私は,①出身国の文化を伝えていくこと②自分自身を知ってもらっていくこと が大切で,その中に外国語があり,子どもたちの興味関心があり,もっと知ろうと思ってコミュニケーション能力の素地が養われていくのではないかと思いました。
 今,外国語活動の教科化や学年の低学年化の動きがあります。メグ先生は1年生から少しずつ始めてもいいのではないかと話していました。このような現場の声も聞きながら,子どものための教科・活動にしていくべきだと思っています。

メグ先生のお話を聞いて,ちょっとした出会いがその人の人生を変えること,そして国を越えて交流することのよさについて改めて知ることができました。また,教育現場における国際理解教育や外国語活動,英語教育のあり方についても考える機会となりました。
私たち自身の世界の人たちとのコミュニケーション能力も問われています。外国に行かなくても,積極性があれば,身近な所で自分自身のグローバル化を図れることを感じた時間となりました。