第4回だんだん塾講演会

 今回の第4回だんだん塾では,前 島根県立松江東高等学校長の中村清志先生を講師としてお招きし,教師を目指す学生達に,学校の先生としての心構えや,生き甲斐,教育について,中村先生のこれまでの長い教員生活を振り返って熱く語っていただきました。

中村先生は,松江東高等学校長在任中,校長だより「よぶこえ」を数多く発行されたり,生徒に励ましの声かけをなさったり,開かれた校長室をお作りになったりと,生徒から慕われた名校長先生として評判でした。 

実施日:

平成25年2月21日 14:30~16:00

場所:
教育学部多目的ホール(517)
参加者:
学生29人(1~4年生,院生) 教職員7名   合計36名

 

当日の講演の内容について,簡単に紹介します。

演題「がっこうのせんせい

講師 中村清志 氏(前 島根県立松江東高等学校長)

 

講演の柱として,①教員になろうと思った原風景 ②がっこうのせんせい ③エール 人生の応援歌の,この3つの小題にわけて講演されました。 
まず,中村先生ご自身が教員になろうと思われた原風景として,大阪でお勤めになった高等学校での課題を抱えた生徒との出会いや思い出をお話されました。そして教師の姿勢として,生徒に寄り添う気持ちの大切さを,灰谷健次郎作「兎の目」の小説の内容を取り上げながら説明されました。また,教師の判断がぶれないことが大切であり,その判断の座標軸はいつも生徒にあてて考えることが大切だと話されました。
次に「がっこうのせんせい」として大切なことは,「目の前のこどもたちの命を身体をはって守ること」と,「子どもたちをしてあのような大人になりたいと言わしめる人」であることが大切だと述べられました。子どもの命を守ることを,東日本大震災での津波被害にあわれた人々や子どもたちのビデオを紹介しながら,現地を訪問されたエピソードも交えて説明されました。
また,先生として「まとも」な人となることの大切さを 「ま」:まっとうに生きる人,「と」:隣る人,「も」:物語る人 の3つにわけてお話されました。まっとうに生きる人とは,不正をできるところで不正をしないこと。隣る人とは,人生の最前列に並ぶことのできる人。物語る人とは,生きることを相手の腹におさまるように話せる人であり,そのような教師であって欲しいことを具体的にお話くださいました。

 

 

  1時間半の講演でしたが,中村先生の教員生活の体験談やいろいろな事例を交えながらお話くださり,講演時間があっという間にすぎました。
最後に,元宮城教育大学学長の林竹二先生の次のようなことばを引用して締めくくられました。
「教師にとって最も根源になる仕事は,結局,子どもと一緒に歩くこと,生きること,いつでも側についていて見守り世話をやくという,素朴な しかし 際限のない仕事なんだな」

  

 

【学生の感想】 

  今日の講演会では,とても心にしみるお話が聞けました。先生になる私たちのために,先生にとって大切なことなどを聞き,大変勉強になりました。まだ,東日本大震災からもうすぐ2年となる今日,あらためて被災したときの悲しみがよみがえってきました。先生とは,自分よりも子どものことを一番に考えることであり,将来先生になったら,そんな先生になりたいと思いました。今日聞いたことを胸にとめて,先生になるためにがんばっていきます(数理基礎 2年)

 

  先生という職業について改めて考え,自分の目指す教師像を具体的に持ち直すことができました。教師になるためには何が必要なのか,何が自分には足りないかを考えると,欠点ばかりが見つかり向いていないのではないかと自信をなくすことも何度もありました。しかし,今回の講演を聞くことで,自分自身が教師になりたいと思った時の気持ちを思い出すことができました。
 中村先生が話された内容はどれも奥が深く,心に深く残りました。自分の目指す教師像に一歩でも近づいて行くことができるように,これからも努力を続けていきたいと思います。(自然環境教育3年)

 

  講演の内容の中で最も印象に残った話は,「がっこうのせんせい」とはどういうものを指すのか,どのような存在なのかという部分です。これまで,授業では「教育とはどうあるべきか」は考えましたが,“先生”に焦点を当て,その人間性がどうあるべきかということはあまり考えたことがありませんでした。東日本大震災の話を例に話をされましたが,目の前の子どもたちの命を預かっている,子どもの憧れ,という視点を考えたことがなかったと思いました。ただ単に教科の内容を教えることだけが大切なのではなく,それ以外にも大切なことがあるのだと気づかされました。(初等教育開発 2年)

 

  「目の前の子どもたちの命を,自分の命をもって守る」というお話を聞き,本当に大切なのは目の前の子どもたちを守ることという,実にシンプルなことなのに,実際の現場では,多方面に気をつかうあまりこのことが見えにくくなっていると思いました。今回の講演で懐かしい中村先生の声を聞き,隣る人とは? 物語るとは? という問いをいただきました。これからじっくりと自分なりの答えを見つけていきたいと思いました。そして中村先生のように「心にずんとくる」言葉を持った人になりたいと思います。 (心理・臨床 4年)

 

 
 

 将来教師を目指す学生たちは真剣なまなざしで聞きいっていました。中村先生には,「がっこうのせんせい」について,これまでの豊富なご経験から具体的に話していただきました。この講演会で学んだことを,今後の大学生活や卒業後の社会生活で活かしてほしいと思います