ここでは、前に述べた教育課程編成方針(カリキュラム・ポリシー)に基づいて構築された教職大学院の教育課程について、その特色や体系性を、より具体的に述べます。これらの特色や体系性をよく理解した上で、2年間の履修計画を立ててください。

教育課程の特色

① 山陰地域の教育課題をふまえた教育課程

島根県及び鳥取県は、少子化や人口流出による人口減、後期高齢者割合の増加(生産年齢人口の減少)など共通した課題を持っています。このような傾向は中山間地や島しょ部において顕著であり、複式学級を有する学校数は全体の約1/3にのぼります。一方、近年、へき地の条件を活かした特色ある教育を核として地域活性化に取り組み、全国的な注目を集めるような事例も現れ、ともすれば消極的に捉えられがちな地域社会の特性を教育環境として見直したり、その価値を再評価したりする必要性も指摘されています。 教職大学院の教育課程は、このような地域の状況をふまえ、へき地・少人数教育に関する専門的力量を身につけるとともに、学力向上、ICT活用能力の向上、教育臨床的な課題(不登校、いじめ、特別な支援を要する児童・生徒の増加)への対応など、両県の教育委員会が重視している教育課題に対応した教育課程を構築しています。

② 求められるスクールリーダー像「学び続ける教師」をふまえた教育課程

平成24年中央教育審議会答申に示された「学び続ける教師」をふまえ、教職大学院では、その具体的な姿として「子どもをよく理解できる教師」、「組織の中で力を発揮する教師」、「優れた教科指導力を持つ教師」を想定し、これに対応する3つの資質・能力(子ども支援力、学校創造力、授業デザイン力)をより高いレベルで身につけたスクールリーダーが養成できることを目標に教育課程編成を行っています。

③「総合力」の高いスクールリーダーを育成する教育課程

山陰地域で求められるスクールリーダーとは「学校改善、授業研究、個への対応等の多様な場面で指導的な役割を担い、学校が抱える教育課題を幅広い視点から考察・解決できるとともに、地域教育を活性化するために必要な創造力、企画力、調整力、コミュニケーション力等を総合的に身につけた教師」のことです。①、②をふまえた具体的な教師像を、例えば次のように示すことができます。

  • 小規模・少人数をスケールメリットとして活かす教師
  • 豊かな自然や歴史・文化資産をもつ一方、過疎高齢化が進む地域社会を教育資源として 開発し、活用する教師
  • 子どもの学習者特性を的確につかみ、互いが伸び合う学びの集団となるような学級・学 校マネジメントができる教師
  • 子ども、保護者、教師、地域を有機的に関わらせながら子どもの可能性を全人的に伸ば す教師こうした高い総合力を有したスクールリーダーの養成を目指した教育課程を編成しています。

④ 理論と実践の融合を目指したカリキュラム編成

主に山陰地域が有する教育課題を考察対象にしながら、研究手法や教育理論を身につけ、さらにそれを批判的に検討することを通して「理論と実践の融合」をはかります。具体的には、共通科目や選択科目で修得した学校教育研究の方法や理論を、自らの設定した研究テーマに基づいて行う学校教育実践研究(実習科目)の中で吟味・応用し、課題解決に至る過程の中で省察を繰り返すことによって自らの教育観の深化を図っていくという学修の流れを基本型とします。さらに、これらの成果を課題研究科目において報告書としてまとめていくことになります。

⑤ 現職教員学生と学部新卒学生の協働による学び

本教職大学院においては、職歴等によるコース分けは行わず、教育実践について異なる経験を持つ学生間で展開される相互育成作用・協働作用を重視しています。山陰両県は教員の年齢構成において若手教員の占める比率が低く、いわゆるベテラン教員が若手教員をリードし、若手と協働しながら学校を運営していかねばならない状況があり、ベテランと若手両者間の相互理解と相互コミュニケーションに基づくチーム力が学校管理・運営において重要になるからです。1学年の人数が、現職教員学生と学部新卒学生とを合わせて17名という小規模であることを活かし、共通科目や選択科目(必修)の授業においては、両者が協働しながら授業を展開することとしました。こうした協働の学びの中で、現職教員学生にとっては学校経営上必要な若手をリードする力、或いは、学校現場に戻ってからのOJT(On the Job Training)遂行の基礎的力量を、また、学部新卒学生にとっては教職に就いた後の先輩教員との同僚性を身につけていきます。

⑥ 実務家教員と研究者教員の協働による指導体制

「理論と実践の融合」の観点から共通科目の講義は、実務家教員と研究者教員の協働による指導を基本とし、多くの教員が異なる専門性と教職経験を背景に講義に参画できるよう「複数・オムニバス」による授業形態を積極的に採用しています。一方、協働による指導効果をより高めるとともに講義内容の体系性・系統性を配慮する観点から、講義全体を統括するコーディネーター教員を配置しています。選択科目においても実務家教員と研究者教員の協働による指導体制を工夫するとともに、専門教育担当者と教科教育担当者との協働も可能な限り取り入れています。現職教員学生の課題研究科目及び実習科目においては、勤務校が抱える課題や地域の教育課題について、大学における研究上の知と学校が蓄積している経験知の融合を図りながら計画的・実践的な課題解決が進められるよう、ここでも実務家教員と研究者教員の双方が有機的に関わる指導体制をとっています。

⑦ 多彩なアクティブ・ラーニングによる「考える」授業の展開

多くの授業の中で「事例研究」「模擬授業」「ロールプレイング」「ワークショップ」「フィールドワーク」「参与観察」など、アクティブ・ラーニングによる多様な教育内容・方法を組み合わせ、学校現場での実践と関連付けた授業になるよう工夫しています。同時に「グループ・ディスカッション」「全体ディスカッション」を積極的に取り入れ、現職教員学生と学部新卒学生による主体的な問題解決過程を、実務家教員と研究者教員がティームティーチング形式でサポートします。