教育委員会との連携・協働による現職大学院生の質的向上プログラムの高度化に関する研究

( 2013年度)

プロジェクトの名称 教育委員会との連携・協働による現職大学院生の質的向上プログラムの高度化に関する研究
プロジェクトの概要

 本プログラムでは教育学研究科現職教員短期1年履修コースへ入学してくる島根県,鳥取県を中心とした教員への教育の質を高めることにより,地域に有用な人材の養成を目的とした。現職教員短期1年コースは近年の「教員の資質向上」,「教員免許法のあり方」等の課題を地元の教育委員会と協力して解決していく一手法として本学部に設置されている。かつての教育学研究科が教科内容学としての専門性を学部段階よりも高度なレベルで身につけるカリキュラムであったものに対して,本コースは1年という短い期間の中で,教育現場の課題を,教育学(教科教育学)と教科内容学を組み合わせる(オーダーメイド型)ことによって解決の糸口を探るという特色をもつものに改革してきた。
 こうした状況の中,大学内に留まっての座学研究とともに,積極的に教育現場へ出向き,県内外の研究校での実践を視察し,それらを自らの研究と重ね合わせ,また大学教員や仲間の院生とともに省察することにより,教師としての力量を向上させるとともに,研究の充実も期待される(A)。教育実践的な研究成果を求め,さらに研究成果を国内外に広めるために,修士論文にかわって取り組む特別課題研究の発表会に,島根,鳥取県の教育リーダーであった元校長各1名を招き,特別課題研究についての指導・講評を得て,さらに研究に活かす。さらに,特別課題研究の成果論集の質の向上を図るとともに,ISSN(国際標準逐次刊行物番号)を取得するとともに,論文をPDF化し,CINIIなどのデータベースからアクセスできるようにする(B)。より広い人間関係の構築や,ミドルリーダーとしての自覚を促すために,先輩,後輩との交流や島根県の教員研修者との研究交流(C)も重要であると考えた。
 1年という限られた期間に,より教育効果の高い研修を構築するためにはこれらの方策を積極的に展開することが緊急に必要と考え,本プログラムを実施した。

プロジェクトの
実施状況

 本プログラムでは教育学研究科現職教員短期1年履修コース(以下,現職コース)へ入学してくる現職教員(そのほとんどが地元である島根,鳥取両県の教員)への教育の質を高めるために次のA〜Cの事業を展開した。
A) 「教育課程編成研究」(必修):現職院生達が学校教育において,共通に課題意識をもっている「通常学級における特別支援教育」について,前島根県教育センター長で,教師教育センターの三島修治特任教授に,講義をしてもらった。この講義から得られた知見をさらに実践的に深め,解決への手がかりを得るため,島根,鳥取県内外の研究会,研修会に学部教員とともに参加し,幅広い知見を得るとともに,院生間で省察する機会を設定した。
B) 「学校教育研究」(必修):教育実践的な研究成果である「特別課題研究成果」発表会に,各院生の派遣元の教育委員会から参加してもらい,院生の研究の状況や研究成果を理解してもらった。島根,鳥取の小学校及び中学校の元校長に,特別課題研究について指導・助言を行ってもらった。研究成果を広く公表するとともに,成果の活用をさらに図ることが重要である旨の助言を得た。
C) 「実践報告会&講演会」:現職コースの場合,履修期間が1年であるので,日常的に上学年の修了生と交流する機会を持つことができない。そこで現在,「実践報告会&講演会」として,年に1回の交流会を実施している。この会を母体として,ストレートマスターの現役院生及び修了生,現職コースの院生及び修了生,将来現職大学院への入学を希望する教員,地元での教員を目指す学部学生や各教育委員会のメンバーを対象として,大学院での研究成果の一部を発表したり,相互交流ができたりするように企画した。また,前島根県教育センター長で,教師教育センターの特任教授である三島修治先生に「今,教師に求められるもの」と題する講演を行ってもらった。その後,6〜7人のグループに分かれ,各自の実践をもとにグループ内で情報交換を行い,教師として必要な資質や資質を身に付けるための学習や研修等についても議論を深めた。計44人の参加があった。【ポスター】

研究組織
所属・職 氏名 専門分野 
現職教育支援センター長・人間生活環境教育講座教授 ○多々納道子 家政教育学
現職教育支援センター副センター長・初等教育開発講座教授 川路 澄人 図工・生活科教育
現職教育支援センター教員/健康・スポーツ教育講座教授 平井  章 スポーツ哲学・体育科教育学
現職教育支援センター教員/特別支援教育講座教授 稲垣 卓司 障害児精神医学・思春期精神医学
現職教育支援センター教員/初等教育開発講座教授 富竹  徹 算数科教育
現職教育支援センター教員/自然環境教育講座教授 栢野 彰秀 理科教育学
現職教育支援センター教員/教師教育センター教授 権藤 誠剛 教育方法学
現職教育支援センター教員/初等教育開発講座講師 熊丸真太郎 教育経営学
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)

 

 
A) 「教育課程編成研究」:現職コースで学んだ学生は,修了後,教育現場におけるミドルリーダーという役割になる。そうした人材が1年間という限られた時間において,大学における座学での学びの他に,より積極的に学外に出かけて研修することが促進されることが期待できる。またそこで学んだことを現場で大学教員によるミニ研修(振り返り,意見交換の場)によって,「研修しっぱなし」にすること無く,内省化されることが期待される。そしてその成果は教育現場に還元されることになる。
B) 「学校教育研究」:特別課題研究と称している学校教育実践研究を進め,その成果を広めることをねらいとして,取り組み方や発表会の持ち方を工夫した。
C)「実践報告会&講演会」:特に現職教員として勤務する教員に対して,現職大学院での研究状況を披露すること,将来的なヴィジョンを示すことにより,今後の学生獲得に繋がるとともに,現職大学院生,修了生の研究内容を広く伝える場となることが期待される。学会等で成果を発表するとともに,ホームページによって公開した。