「小学校外国語活動」に取り組む―学生・現職教員の合同研修と、島根らしい教材作成の試み―

( 2011年度)

プロジェクトの名称 「小学校外国語活動」に取り組む
―学生・現職教員の合同研修と、島根らしい教材作成の試み―
プロジェクトの概要  小学校の新学習指導要領に新たに「外国語活動」の章が加わり、外国語活動は平成23年度より5・6年生で年間35時間が必修となった。しかしながら外国語教育は指導対象ではなかった小学校教員の間には、戸惑いと困惑が拡がっている。
このような教育現場への支援と、これから教員を目指す教育学部生・院生の学びの場として、島根県教育委員会・県教育センター・教育事務所と連携し、平成22年7月に研修会(自主勉強会)「小学校外国語活動の会」を立ち上げた。平成23年度はこの会を発展的に継続させると共に、参加教員の中から提案のあった島根らしさを素材にした外国語活動のための副教材作りに取り組み、県下の全小学校への配布を計画した。

 一昨年度立ち上げた「小学校外国語活動の会」は、大学の持つ教育資源を現場教員や地域に提供するとともに、小中教員による実践発表や指導法の演習を通し、参加者(小中高大の教員、地域の外国語活動指導員、教育学部学生・院生)が学習指導要領の趣旨に沿った具体的な活動を学び、さらに参加者同士の意見交換を通して、小学校段階にふさわしい指導の在り方について学び合える場を創ることを目的としている。これは大学の中期目標にある「社会との連携」や「社会貢献」の一翼を担うとともに、教育学部生・院生にも、現職教員の実践から学び意見交換を通し、中期目標にある「高度な教育的実践力」を得る貴重な機会となる。また一昨年度の実践より、現職教員からも、大学生の意欲や新鮮なアイデア等から学ぶものがあるという指摘があり、大学と教育現場の創造的な協働学習の場の創出であるとも考えられる。

 この研修会に加え、さらに現職教員から提案された、島根らしさを活かした教材作りと、県内全小学校への配布も計画した。島根の自然・歴史・産物・伝統行事等を素材にした、外国語活動で使える副教材作りは、大学の理念・目的である「地域的特性を生かした」取り組みでもあり、また基本的目標にもある「地域課題に立脚した特色ある研究を推進し、その経過を広く社会に発信する」ものと合致すると思われる。
プロジェクトの
実施状況

1. 研修会「小学校外国語活動の会」の開催
 平成22年度末までに7回開催してきた上記の会には、毎回50-60名の参加があり、県内では隠岐や益田、県外からも参加があった。会では上記のとおり、実践発表を軸に、活動例や指導法を互いに学び合うとともに、参加者間の意見交換を重視し、新たに導入された外国語活動に関する不安や疑問を共に解消していくことも目的としている。また県教育委員会や教育センター・教育事務所主事複数名の参加により、教育行政からも貴重な情報やアドバイスを得ることが出来、大学教員による理論面からの支援も可能である。
平成23年度の研修会は、これまで土曜日の午後開催であったのを、夏には文部科学省より直山調査官に講演・指導助言者として来学を依頼し、2日間にわたる研修を実施した。また冬には時間を延期した研修を実施した。

 

第8回小学校外国語活動の会【平成23年7月2日】 
(夏季研修会開催に向けての打合せと資料作成)

第9回小学校外国語活動の会(夏季研修会) 【平成23年8月20・21日】
8月20日(土)13:00~16:00
概説/演習 これだけは知っておきたい!!外国語活動の授業理論と指導法
             島根大学教育学部   大谷 みどり
          奥出雲町立亀嵩小学校  大谷 淳司
・演習1 英語ノート1の指導の実際
           島根県立浜田養護学校 天津 祐子              
・演習2  英語ノート2の指導の実際
              吉賀町立柿木小学校  山﨑 恭子
8月21日(日)9:30~12:00 
 ・提案発表1 外国語活動の授業実践
「学級経営に活かす外国語活動,江津市の先生方と共に」
江津市立渡津小学校  加藤 君江
江津市立津宮小学校  小田 千香
江津市立津宮小学校  木村  孝
・提案発表2 外国語教育における小中連携の授業実践
 「小学校の外国語活動の趣旨をふまえた中学校外国語の導入期の指導の在り方について」
   松江市立第三中学校  中釜 智子 
指導助言  
文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 
直山 木綿子 先生
13:00~15:30 
・講演「外国語活動の指導を見直す-
「評価」と「言語活動」の視点から-」
  講師:文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官 
直山 木綿子 先生

第10回小学校外国語活動の会(冬季研修会) 【平成24年2月18日】
1:00~1:10  開会挨拶
1:10~1:50 「外国語活動の動向と新教材」 
橋本 憲(島根県教育庁義務教育課)
1:50~2:35 「チームで進めるスリム化した外国語活動」
        杉谷 健太・大谷 淳司(奥出雲町立亀嵩小学校)
2:35~2:45  休憩
2:45~2:50  Short Activity 
片寄メ―ガン(島根大学附属小学校ALT)
2:50~3:35  「初めての高学年担任と外国語活動」
梶谷 修一郎・加藤 君江(江津市立渡津小学校)
3:35~4:25   全体協議とアイデア・情報交換
4:25~4:30     閉会挨拶

第8回の会は、夏季研修会の打合せで、これまでの参加者のみに声をかけ16名が出席した。第9回夏季研修会には、2日にわたり併せて78名の参加があり、冬季研修会には38名の参加があった。共に、小学校だけでなく中学校からの参加もあった。

 

2. 島根らしい教材作り「島根からの小学校外国語活動事例集vol.1」

小学校外国語活動については、国から昨年までは「英語ノート」が配布され、今春からは”Hi, friends”が配布されているが、現場の教員からの提案をもとに、島根を素材にした副教材を作成し、県下の全小学校への配布した。これまで取り組んできた県下の小学校の実践例も含め、島根の自然・歴史・産物などを小学校外国語活動で取り上げる事により、児童・教員・学生が地域の良さを再認識するとともに県外・国外に島根を発信できる教材として有効であると考えられる。また外国語活動と他教科との連携に結びつくとも思われる。
 尚、冊子の配布にあたり、島根を英語で学ぶという点から、島根県庁観光振興課より、島根県の英語マップ、観光・特産物の冊子各251部、松江市国際観光課より松江市の英語地図251部を提供頂き、各小学校に上記冊子を送る際に同封することが出来た。

研究組織
所属・職 氏名 専門分野
教育学部・准教授 ○大谷 みどり 英語教育学
教育学部・教授 林  高宣 英語学
教育学部・准教授 縄田 裕幸 英語学
教育学部・准教授 猫田 英伸 英語教育学
教育学部・嘱託講師 Carmella Lieske 英語教育学
附属小学校・外国語指導助手 Megan Katayose 英語教育学
島根県教育委員会
 義務教育課主事 橋本 幸雄 地方教育行政・初等教育
 義務教育課主事 橋本 憲 地方教育行政・中等教育
島根県立教育センター主事 佐貫 晃弘 地方教育行政・初等教育
奥出雲町立亀嵩小学校教頭 大谷 淳司 初等教育
本プロジェクトにより期待される効果
(成果の公表方法を含む)
1. 参加した現場の教員には、外国語活動の在り方と、その実践方法を学ぶ貴重な機会となる。
2. 学生にとっては、現職の教員の実践を見て意見を交わすことにより、小学校外国語活動についてだけではなく教師という仕事・教育現場の様子を学ぶ貴重な機会となる。
3. 地域の特徴を生かした教材を作成、県内の全小学校に配布することにより、大学の地域への貢献とともに、地域の事を考え、また外に向けての発信型教材としての活用が可能である。
4. 学会等で、大学と現場の協同プロジェクト、地方からの発信教材として成果を発表することが可能である。
地域のことを知るという意味で今回、本学部社会教育の教員、また県教委の社会教育の主事からも助言を得ることが出来、学内での他専攻とや県教委との協働プロジェクトの可能性を探ることが出来た。