1.教職大学院の概要

(1)教育目標

教職大学院では、山陰地域の学校教育現場が有する教育課題に対応することができる高い総合力を有した「学び続ける教師」「スクールリーダー」を養成することを教育目標とします。後述するように現職教員と学部新卒学生が協働で授業展開することを特色としていますが、それぞれの教育目標(養成像)については、以下のように設定しています。

 <主幹教諭等ミドルリーダーの養成像>

  • 学校創造,授業デザイン,子ども理解・支援などの教育諸課題に対応する高度な教育実践力を持つ教師
  • 高い企画力・調整力やコミュニケーション力によって,学校や地域の諸課題解決を組織的に主導できる総合的力量を持ったスクールリーダーとしての教師

 <学部新卒学生の養成像>

  • 学校創造,授業デザイン,子ども理解・支援などの教育諸課題に対応する基本的実践力を持つ新人教師
  • 学校チームの一員として多様な協働に参画し,即戦力として貢献できる新人教師

これらの教育目標(養成像)は、島根県教育委員会、鳥取県教育委員会をはじめとする地域社会との協働の場(山陰教師教育コンソーシアム)を通じて、今後も常に探求・共有することに努めます。

(2)学位授与に関する方針(ディプロマ・ポリシー)

教職大学院では、2年(長期在学プログラムにおいては3年)以上在学した上、所定の単位を修得し、以下のような資質・能力を獲得した者に教職修士(専門職)の学位を授与します。

  • 学び続ける教師の基盤として求められる深い学識を身につけている。
  • 学校創造力、授業デザイン力、子ども支援力を総合的力量として身につけている。
  • 学校創造力、授業デザイン力、子ども支援力のいずれかについて、高度の専門的能力を身につけている。
  • 地域の教育課題に立脚した研究テーマを設定し、学んだ理論と教育実践との往還を通じて、具体的な課題解決に取り組む教育実践研究の方法を身につけている。
  • 立場や意見を異にする人々と協働しながら地域の教育課題を探求・共有し、その解決に向けて主導的役割を発揮することができる。

(3)学習到達目標(ラーニング・アウトカム)―教師力ナビゲーションシステム

教職大学院では、学位授与に関する方針を踏まえ、学校創造力、授業デザイン力、子ども支援力のそれぞれについて、次のような学習到達目標を設定しています。

① 学校創造力

項目群 評価指標
学級経営 学級経営の意義と機能に関する理論的知識を有している。
児童・生徒や学級の現状に応じた学級経営の具体的方策を提案できる。
学校経営に関する基盤的知識 学校経営の意義と機能に関する理論的知識を有している。
学校経営に関して批判的に検討することができる。
学校を取り巻く社会的・文化的要因の理解 学校教育を取り巻く社会的要因・文化的要因を理解している。
へき地・複式教育の特性を理解している。
家庭・地域社会との協働・連携 保護者・地域住民とのコミュニケーションの理論的知識を有している。
地域における教育拠点としての学校の役割を理解している。
同僚・保護者・地域の人々と連携してカリキュラム改善を行うことができる。
学校改善 学校教育をエビデンスに基づいて理解する重要性を理解している。
学校改善に資するエビデンスの分析手法を理解している。
エビデンスに基づいた学校改善策が提案できる。
ビジョンの形成 エビデンスに基づいた学校経営計画を立案することができる。
学校経営に関して公正な判断や合意形成を行うことができる。
協力体制と風土づくり 学校経営におけるリーダーシップのあり方を理解している。
校内外の連携体制を構築することができる。
他の教職員や管理職にエビデンスに基づいた提案ができる。
倫理規範とリーダーシップ 理論やエビデンスに基づき,学校教育に関する自己の経験を相対化できる。
学校経営の方針に基づき,自らの職務のあり方を考えることができる。
公正な社会を構築するための教師としてのあるべき姿を描くことができる。

② 授業デザイン力

項目群 評価指標
学習にかかわる理論を踏まえた授業研究 学習にかかわる理論に基づいて,授業デザインができる。
現代的な教育課題に対応した授業研究の理念や方法を理解している。
学習にかかわる理論に基づいて,授業研究会や授業協議会を運営できる。
子どもの発達の段階と各教科・領域の教育内容の関連を理解している。
学習にかかわる理論に基づいて,各教科・領域の学習材の開発と改善ができる。
教科書や学習材を批判的に検討できる。
理論と実践の往還 教科に必要な専門知識を指導に活かせる。
教科教育に関する知識や技能を活用して効果的な指導を開発し,実践できる。
学習観の発展・指導の改善 日々,教育実践について省察している。
継続して自らの学習観を発展させようとしている。
カリキュラム・ マネジメント カリキュラムの編成に必要な理論を理解している。
「開かれた学校」を構想するために必要な知識や視点を身に付けている。
「開かれた学校」として,カリキュラムの構想や改善ができる。
地域・保護者の教育課題を把握することができる。
リーダーとして,同僚と連携したカリキュラムの構想を行うことができる。

③ 子ども支援力

項目群

評価指標

教育相談と

生徒指導

教育相談や生徒指導に関する理論・技法を理解している。

教育相談と

生徒指導

教育相談や生徒指導を行う上でのポイントを,事例に則して述べることができる。

学習者や保護者の教育的ニーズに応じたプランを,計画・修正できる。

子ども理解と

授業研究

インクルーシブ教育や授業におけるユニバーサルデザインの考え方や内容について理解している。

インクルーシブ教育やユニバーサルデザインの視点に基づいて,学習指導案を作成することができる。

インクルーシブ教育や授業におけるユニバーサルデザインの視点から教育活動を分析・評価し,改善案の提案ができる。

ユニバーサルデザインの視点に基づく授業研究のファシリテーションを行うことができる。

障害のある子の

理解と関わり

発達障害の概要について,対応と関連させながら理解している。

学習者に対する心理検査等のアセスメント結果を解釈し,実践につなげる

ポイントを提案できる。

障害(知的障害・肢体不自由・病弱)の原因や心理・行動特性について理解している。

障害(知的障害・肢体不自由・病弱)の特性や状態に応じた指導・支援について理解している。

障害(知的障害・肢体不自由・病弱)の特性や状態に応じた教育課程が編成できる。

校内外での

連携・協働

特別支援教育コーディネーターに求められる役割について理解している。

教育等の各分野(教育・医療・保健・福祉・労働等)で行われているコーディネートの手法について理解している。

地域の実情を踏まえて,校内外と連携した支援を実践しようとする。

  教職大学院で開講される授業科目はすべて、これら50の評価指標と対応付けられています。また、授業科目は「山陰の教育課題」「エビデンスの収集・活用」「クリティカル・シンキング」「個と多様性」「ICT活用」の5つの共通テーマ軸とも対応づけられています。授業科目と50の評価指標、5つの共通テーマ軸との関連を示し、学生のみなさんの自己評価・自己改善の助けとなるものが「教師力ナビゲーションシステム(教師力ナビ)」です。
  教師力ナビは、50の評価指標についての自己評価、選択した項目群に関してこれまで取り組んできたことやこれから取り組みたいことの自由記述を含みます。学生のみなさんは、これらを定期的に概観し、指導教員等と面談を行うことで、履修する授業科目の選択や、学校教育実践研究及び課題研究における活動内容の決定などに役立てていきます。

(4)教育課程編成方針(カリキュラム・ポリシー)

  教職大学院では、理論と実践の往還を通して、地域の教育課題を解決するのに必要な探究的省察力をもつ「学び続ける教師」を育成するべく、次のように体系化された教育課程を編成しています。

  1. 「学び続ける教師」に必要な資質・能力として、学校創造力、授業デザイン力、子ども支援力の3つを定め、これらをより高いレベルで身につけたスクールリーダーの養成を目標として教育課程編成を行いました。また、3つの力を内容面から相互に関連づけ、特に山陰における教師の生涯発達を支える基盤となるよう「山陰の教育課題」「エビデンスの収集・活用」「クリティカル・シンキング」「個と多様性」「ICT活用」の5つの共通テーマ軸を設定しています。
  2. 共通科目及び選択科目においては、学校教育研究の理論と方法を修得します。総合的力量を形成するため、共通科目20単位の必修に加え、「学校創造」「授業デザイン」「子ども支援」に相当する選択科目群においても、それぞれの科目群から主要な授業に関わる1科目2単位をさらに必修化しました。また、修了に必要な選択科目6単位に関しては、3つの選択科目群のいずれかに特化し単位を修得することで、求められている教育課題の解決や自らの課題意識等に特化した力量を身につけることが可能な教育課程編成を行いました。授業方法としては事例研究やワークショップ、附属学校や拠点校での授業参観などを多く取り入れ、具体的な教育課題に即した双方向的な学び、主体的かつ体験的な学びとなるよう留意しています。また、研究者教員と実務家教員の協働、現職教員学生と学部新卒学生との協働により、多様な視点にふれながら、理論と実践を往還できる教育課程となるよう留意しています。
  3. 課題研究では、学んだ理論を地域教育課題の探求と解決に向けてどのように活かせばよいかについて、自ら設定したテーマに即して先行研究の収集・分析を行ったり、必要な予備調査等を行ったりします。また、これと連動して行われる学校教育実践研究(実習科目)では、実際の学校教育現場をフィールドとして、仮説に基づく授業や教育活動を計画的に試行します。得られた結果については、課題研究において多角的に討議・省察を行い、学びの成果の集大成として報告書を作成します。さらに、地域社会の代表である山陰教師教育コンソーシアムにおいて、この報告書に基づく成果を発表し、そこでの意見交換を通じて自らの教育観の深化を図ることとしました。